123、の魔法 | ナノ





昨日の停電は、ここ最近で一番の大停電らしい。
今は朝だから明るいけれど、夜になったらまた暗くなるんだろうな。
だってここにいるおバカさんは、「つか改造すればまた停電するから、復旧させても無駄だよな。」と復旧作業をやめてしまったから。
これでナギサのジムリーダーなのだ。笑ってしまう。




「デンジ、朝だよ。まだ寝ないの?」
「もーちょいだから寝ない。センこそ帰らねぇの?」
「もーちょいらしいから待ってる。」




適当な場所に腰をおろすと、ポケギアで暇をつぶす私。
配線をいじりまくって、なんだか楽しそうなデンジ。


なんでこんな改造バカが好きなんだろう、私。
問い掛ければ、答えは簡単に見つかる。
私はこの人の短所より、山程の長所を知っているから。
もう出会ってから数年経つけど、デンジはなにも変わらなくて。
改造バカで停電王子だけど、それ以前にナギサのスターなのだ、彼は。
だから街の人も文句を言わないし、デンジも気にせず改造を続ける。


私ごときが、その信頼関係に割って入れるはずもなくて。
だから私がいくら「改造禁止」と言った所でそれは無駄というもの。
なんだか突然孤独感に襲われて、膝をぎゅっと抱えこんだ。




「………セン?」
「え、なに?」
「どうかしたのか?なんかすげぇ落ち込んでね?」




どきり、とした。
配線じゃなくて、私を見つめてくる蒼の瞳が、いつもより優しい気がした。
なんだかすごくどきどきしてしまって、私は「大丈夫」と、一言返すので精一杯だった。


デンジは納得してなさそうに、私に手を伸ばした。
私は避ける事もできなくて、ただその手に頭を撫でられる。




「なんで俺に言わねんだよ。」
「でん、」
「もーちょい頼れよな。」




ああ、どうしてあんたはそうなの、デンジ。
私の気持ち知らないで、私が喜ぶ事ばっかり言う。
同じ気持ちだったら、なんて思ってしまうような私じゃ、デンジには頼れないのに。


嬉しくて、気恥ずかしくて、顔を背けた。
デンジはそんな私を見て、驚いたように目を丸くした。




「あれ、お前顔赤くね?」
「き、気のせいだよ。」
「や、ぜってぇ赤いだろ。」
「気のせいだったら!もう、」




私置いてどっかお行きなさいよ
(熱が冷めたら急いで追いかけるんだから!)




 

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