123、の魔法 | ナノ





ぷつん。


そんな音と共に、髪を乾かしていたドライヤーも、部屋を照らす電球も、テレビのお姉さんも全部消えた。
この街に住むのなら、覚悟はしておかなきゃ駄目なのは分かってる。
だけど、やっぱりいきなり消えると普通に困る。




「まだ髪乾いてないのに。」




やらかしてくれた。あの停電王子め。
このままじゃ風邪ひいちゃう。
でも、どう頑張ってもドライヤーはつかない。
諦めてタオルで乱暴に髪をふいた。


これは文句言いにいくしかないでしょ。
別に仕事で会えなかったから会いたい、とか乙女なこと考えてないんだから!
文句を言いに行くだけ。
だからニヤけないで、私の顔!


そんな阿呆な思考回路で、お気に入りの夜間着にあったかいコートを羽織って、外に出た。
寒い。街も真っ暗だった。
街灯もないけど、ジムまでの道はなんとなくわかって自分の記憶力と感覚に感謝した。




「ちょっとデンジ!またやらかしたわね、この停電王子!」
「あー、悪い。気付かなかった。」
「おかげさまで髪乾かせなくなっちゃった。風邪ひいたらどうしてくれんの。」
「まあ看病くらいはしてやる。」
「そ、そんなことされても嬉しくないもん!」




デンジは話しながらも手を動かしてて、私ばっか必死みたいでなんだかムカつく。
だから辺りを明るく照らしてたレントラーに明かりを消してもらった。
デンジは私を睨んだ。


お構いなしに暗い空間でレントラーを撫でる。
あんな改造バカしらないんだから!




「セン。」
「な、なに。」




いつの間にやら近くにいたデンジに、耳元で囁かれて声が上ずる。
そんな私を見てデンジは笑って、また耳元で話し出した。




「ごめん。復旧させるから手伝って。」
「やだ!自分でやりなさいよっ!」
「俺はセンと直したい。手伝ってくんなきゃ直さねぇ。」
「………し、仕方ないから手伝ってあげる。」
「セン大好き。」




言われた途端、顔が熱くなった。
そんな簡単に大好きだなんて言わないでよ、私の気も知らないで!
私はそんなあんたが、




だいっきらい
(気持ちが大きすぎて、大好きだなんて簡単に言えないの。)




 

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