日だまり色 | ナノ






簡易詠唱で弓を取り出した松雪が巨大虫豸に突っ込んだのが、合図だった。


不知火家の弓は魔剣のような、所謂魔弓と言われる悪魔の一種。召喚する弓はその人物の個性によって様々で、松雪の弓"夜桜"は接近戦タイプ―――弓と言うよりは、ボウガンに似ていて、弓の先端末端に小型の刃が取り付けられている。
対して日向の弓"風鈴"はバランスタイプで、"夜桜"のように弓の先端には小型の刃が付いているが、形状は通常の弓な為射るまでに少しの溜めが必要である。


金造が詠唱を始めたため必然的に前に出た日向は、刃で虫豸を切り裂いていった。




「………ああもう!うっとうしいわ!」




バックステップで一旦退くと、弓を構え気を放つ。気で出来た、悪魔の目には見えない矢に触れた虫豸達は霧散していった。
残りも金造の詠唱が効いてきたのか、次々と霧散していく。


油断は出来ないため背中合わせになって錫杖を構えてから、金造は口を開いた。




「粗方片付いたみたいやな、松雪姉は?」
「あっちの方行ったみたい。ま、さっきの様子やと余裕みたいやったしそろそろ終わるやろ。…あ、金造。」
「ん?なんやどっか怪我でもしたか?」
「ちゃうちゃう、あんな、……さっき、おおきにな。」




早く言っておかないと忘れるから、そう思っての突然の感謝の言葉に金造はきょとんと固まる。
それからふ、と笑い「礼なん要らんわアホ、それよりぼーっとすんなよ!」と錫杖を振りかぶり、まだ少数漂っている虫豸に向かっていった。「おん、任しとき!」と笑った日向も弓を構え直し、鳴弦を射た。




結末は真っ暗闇にぽつんと光る
(巨大虫豸を倒した松雪が戻って来るまで、あと数分。)







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