日だまり色 | ナノ






「二人とも久しぶりやねえ、元気やった?」
「久しぶり松雪姉さん!私らはこの通りめっちゃ元気やえ。」
「日向は元気すぎるんとちゃうか?」
「黙りよし、金造のアホ!」




正十字町にある森の入り口。
口論を始めた二人を遮る様に、松雪がぱんぱんと手を叩く。


その音に、この不知火家の長女は喧嘩が大嫌いだったと言うことを思い出して―――とは言え決して本気の口論ではなかったが、金造も日向も慌てて口を閉じた。




「…ふふ。日向も金造くんも、どっかのアホ二人とちごぉてお利口さんやねぇ。ほな、任務内容説明しますからしっかり聞いとってね。」
「「う、うぃっす。」」




どっかのアホ二人、そう言った彼女の目が笑っていなかったこと、任務内容の説明をするということに二人の返事が固くなる。


その様子をみて満足そうに微笑んだ松雪は、任務内容を説明しはじめる。




「今回私らが任されたんは、悪魔の討伐任務。ここ、訓練生の合宿とかに使われる森なんやけどね、手騎士に手懐けられとる虫豸がおるんですわ。」
「ぶふぉっ、虫豸とか廉造が見たら泣くんやない?」
「廉造くん虫ダメやもんねぇ、で、その虫豸の一部がなんや命令外の行動とって人を傷付けとるらしいから、それを討伐するえ。二人には私の補佐…せやなあ、金造くんには詠唱を、日向には鳴弦で援護を頼んます。」
「「はーい。」」
「あ、一部の虫豸だけやから大丈夫やと思いますけど……万が一詠唱中に集中的に狙われりしたら、日向は私より金造くんの援護優先してぇな。」
「おん、わかった。」




返事をして、日向は一枚の紙を取り出した。それを見た金造が「もう弓出しとくんか?」と聞くと、「私は松雪姉さんとちごぉて、咄嗟に出し入れはまだ出来ひんから。」と苦笑いを返す。


親指の先を噛んで少し血を出すと、それを紙に伸ばす。そして、紡いだ。




「"不知火の名を持つ者が命ず。我の気を食らいて今鳴り響け、風鈴!"」




ふわり、一陣の風が日向の紙を揺らす。風が収まった時、彼女の手には浅葱色の弓があった。




「早よ日向も簡略詠唱覚えられればええんやけどねぇ。」
「その詠唱聞き飽きたわ。」
「私はそんな優秀やないからまだ無理ですー。」
「ふふ、まあ長期休みにでも教えたるわね。さ、金造くんも錫杖出し。そろそろ行くえ。」




久しぶり、は慌ただしく
(初任務、スタート。)







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