日だまり色 | ナノ






「おい、日向。」




後ろからの声に振り向こうとした日向の頭の上に、金造は腕をのせた。
それに「ちょお、重い!!」と抗議する日向に「うりうりー!」と更に体重をかける。




「もう、なんなん!?用あったんやないの!」
「おん。お前さ、携帯充電切れとるやろ?松雪姉からメールあったんやけど。」
「え、そうなん?見して。」
「ん。ほれ。」




送信者:松雪姉
件名:日向からメール返って来ぃひん。
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多分日向充電切れとるから、まとめて金造くんに伝えときます。

二人の初任務なんやけど、来週の週末に私の任務の補佐ってことになりました。
任務内容は当日のお楽しみっちゅーことで、また前日にでも集合場所とか知らせます、よろしゅう。




「え!?なんで松雪姉さん!?京都からわざわざ来るん?」
「さあ?当日聞いたらええんちゃう。」




身内が自分の初任務に来ることに慌てる日向とは対照的に、欠伸をする金造を日向はキッと睨む。
失敗したら有無を言わせない笑顔で凄まれるのかと思うとまだ一週間も先のことなのに、背筋が凍る気がした。


大体何故自分と金造の初任務が一緒なのかと小一時間教師に問い詰めたいくらいだったのだ。それが更に姉とも一緒だなんて、日向は頭が痛くなった。




「柔造さんやったらよかったのに…。そしたら怒られるんは金造やろうし…。」
「ぶはっ、ざまあ。松雪姉なら俺は怒られんくてすむわ。」
「やかまし、ちょお今真剣にショック受けとるさかいそっとしといたって。」
「なんで俺が日向の言うこと聞かなかんねん却下や却下。うりうりー。」
「ぎゃっ!ちょお、重い!重いて!」




現在、5月半ば。クラスではすっかり恒例化してしまったやりとりに、周りが生暖かい視線を向けていることを二人は知らない。


そして、実は朔夜が「じれったい二人を見守る会」なるものを結成していることも、もちろん知らない。




知らぬは当人達ばかり
(周りの目どころか、自分の気持ちも。)







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