私が子供だからそんな顔をしたのだろうか。
そもそもこの気持ちはただの憧れだったのだろうか。
大人からしたらそう言う、のかな…。
色々思い出したら涙が出そうで、ぐっと目を瞑って泣くのを堪えた。

つい先程のこと。












「名無しもイヴも気に入ったみたいで良かったわ」

「ギャリーさんが持ってきてくれたマカロン、凄く美味しい!」

「名無しが作ったアップルパイも美味しいよ」

「本当ね!名無しってばお菓子作り上手」

「あ、ありがとう」


イヴの家で勉強会と題してのお茶会をしていた。
ギャリーさんは行き着けの喫茶店で買ってきたマカロン。
私は普段作り慣れているアップルパイを作って持ってきた。

実はアップルパイは2人に喜んで欲しくて、この日が来るまでお母さんと一緒にアップルパイ作りに励んでいた。
練習したおかげでこの日のアップルパイは綺麗に焼けた。

切り分けられたアップルパイとマカロンと、イヴのお母さんが淹れてくれた紅茶。
なんて贅沢なお茶会なんだろう。

「さ、ちゃんと勉強もしなくちゃね。難しい漢字とか、特にね」

「ギャリーさんにとっては楽勝だよね?分からなくなったら聞くね」

「こーら、名無し。聞いてばっかじゃ駄目よ」


ちょっとだけ怒られて、つい膨れっ面になりそうだったけど我慢した。
ギャリーさんが優しそうに笑って、本当に分からなくなったら聞きなさい、と言いながら頭をなでなでされて、さっきまでの気持ちはどっかいってしまった。

ギャリーさんとイヴと私。
そういえば私達は最初からこんなに打ち解けられた訳ではなかった。
確か、美術館…ゲルテナの作品を見ていて、迷い込んでしまったあの時。
私達3人は出会ったんだっけ。


あの時は怖いことが沢山あったなぁ…今はちょっとトラウマかも。
なんて思い出して、ふとイヴと目が合って、イヴは嬉しそうに笑う。


「…イヴ?どうしたの?」

「ううん、こういう時間…楽しいな、って思ったの」

「イヴ…」


私もこういう時間が楽しいし、好き。
イヴも、ギャリーさんも…。

暗くなってきて、また今度お茶会しようね、という約束をした。

帰り道は途中まで一緒だから送るわよ、とギャリーさんは言ってくれて私は素直にお願いした。
他愛ない会話をしながら、歩く帰り道。

隣で歩くギャリーさんの横顔が子供にとっての私には眩しくて、徐々に込み上がる気持ち。
しまっていたギャリーさんに対しての気持ち。

言葉にしないように、しない方がいいと思いながら行動に出てしまって、ギャリーさんの服の袖をきゅ、と掴んでしまった。


「…名無し?」

「……すき…」

「え?」


小声で溢れてしまった気持ちを出してしまった。
出してから気付いた。
もしかして、声に出して言ってしまったのでは…と。
ハッとして服の袖から手を離して恐る恐るギャリーさんの顔を見ると、ギャリーさんはなんとも言えないような複雑そうな、表情をしていた。


「あ……」

「…名無し。あのね」

「…っ…も、もう此処で大丈夫です…!」


だから、さっきのは忘れて下さい。

子供ながら自分は卑怯だなんて、思いながらその場から逃げるようにギャリーさんから小走りで離れた。


帰り道の途中。
サンシキスミレが寂しく風に揺られているのを目にして、また涙をぐっと堪えていた。
今の一方的な私にぴったりな花だと。
そう考えてたらついに、我慢出来なくなって涙が溢れた。



サンシキスミレ
(私を思って下さい)





使いたかった花。
ヒロインはイヴと同い年ですが、ちょっと子供じゃない考え方をしてるような…気がしなくもない。
思った以上にグダグダな上、シリアス寄りになってしまった。
ギャリー視点も書く予定。

5.6




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