女体化 | ナノ

2.花咲く乙女たちの嫉妬
仁王と付き合ってから、早数週間。自分の周りにこれと言った変化は見えないけれど、仁王自身とその周りには少しずつ変化が見える。
前みたいに色んな男子から告白されているのは変わらない。

けれど、その対応が前とは違う。

「すまんね。俺、付き合ってる彼女がいるけん」

初めてこの返事をもらった男子は「彼女?彼氏じゃなくて?」と何度も仁王に聞き返したらしい。仁王は面白そうに俺に報告してくれた。

仁王が返した衝撃的な返事は、瞬く間に学校中の噂になり、誰が彼女なんだ?と言う話題で持ちきりだ。いつも仁王の側にいる柳生や、テニス部の部長である幸村君。テニス部でなく、もしかしたら他校の人前では?と、相手は様々。もちろん、同じクラスの俺も候補にあがっている。

そして、最も変化したことは…

「今日は2年生の子に告白されたんじゃ。先輩のことずっと好きだったんですーってね。あ、あとこれ今日下駄箱に入ってたラブレター。見る?」

俺と仁王以外は誰もいない女子テニス部の部室。昼休みはここで一緒にお昼を食べようと、付き合った当初に決めたのだ。

お弁当と一緒に広げられたのは、色とりどりのレターセット。可愛らしい字にハートのシール。いかにも女の子が書きました!というような手紙ばかりが並んでいる。

「全部女じゃん、しかも彼女がいるって聞いても諦められません…だって」

中身を見れば、仁王への愛の言葉がびっしり詰まっている。しかもこの手紙の主、同じクラスでよく仁王に話しかけてくる子じゃないか。
自分が使わないような言葉ばかりで、女の子はこういう風に告白をするものなのかと逆に感心してしまった。

「モテモテじゃね、彼女がいるって言ってから女の子からの告白が圧倒的に多くなったのぉ。まぁ、大体は憧れからきてて、恋愛ってわけじゃなさそうだけど。」

手紙に書かれている名前を見ると、モデル並に美人な子であったり、アイドル級に可愛い後輩だったりとレベルの高さに驚かされる。
自分は容姿に少し自身はあるが、仁王好みの美人ではない、可愛い系だ、と最近聞かされた。それが妙に悔しかった。

「美人ばっか」
「なんじゃブンちゃん妬いた?」
「妬いてねぇよ、俺だって仁王のこと好きだって気づいたの最近だし」
「釣れないのぉ…」

仁王は椅子から立ち上がり、俺の座ってる椅子に無理やり座ってきた。シャンプーの香りなのか、甘い香りが鼻を掠る。落ちないように肩を抱かれれば、キスができそうなくらい、顔が近づく。頬と頬とが触れ合って、温かさと柔らかさが気持ちよくて胸が高鳴る。

「ちょっと、今弁当食ってるんだけど?つか落ちる、邪魔」
「せっかく2人っきりなんじゃし…ね?」

ね、じゃないだろうと思いながらも、体勢を直し仁王をイスに座らせる。期待の笑みが向けられ、恥ずかしさに頬が紅潮する。仁王の足の間に自分の足を置き、顔を近づけ唇を落とした。
仁王も答えるように俺の首に腕を回し、お互い優しく体を包む。
止まらなくなるからいつもキスだけというのが暗黙の了解。

ー…でも。
今日の俺はなんだかむしゃくしゃしていた。

薄く開いた仁王の唇に舌を差し込むと、仁王の体がビクリと震える。拒絶なのか肩を掴まれるが、気にしない。

「ちょっ…ブン…んっ」
「にお…」

逃げる舌を追いかけて、絡めて、吸ってあげる。柔らかい胸同士を合わせれば、体中が喜ぶような快感に包まれる。

「んん…はっ…ぁ」

初めて聞く仁王の声に、くらくらと眩暈がする。あぁ俺仁王に欲情してる…なんてぼんやり考えていると、両肩を掴まれ無理やり体を剥がされた。唇同士を繋ぐ銀の糸が途切れると、お互いの熱い息の音だけが部室に響く。

「今は昼休みじゃろ…」
「いいじゃん、いつもしてるんだし」

悪戯気に微笑めば、いつも俺を惑わす仁王が逆に大人しくなる。俺の頬を優しく撫で、顔を引き寄せる。またキスするのかな?と身構えるも、唇は俺の頬に落とされた。

「続きはまた明日。今日は部活で遅くなるからのぉ」
「…やだ」

俺は仁王の手首を掴み、仁王の膝へと座った。全身の体重をかければ身動きも取れない。


「ブンちゃん…!?」


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