これが僕の愛です/高尾 | ナノ
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真太郎が高尾に関係があることだ、と言ったときこんなことになるとは思わなかった。

あの図書室の出来事で、私が元マネージャーだと高尾が知ってから毎日のように絡んでくるようになった。


「なあなあ真ちゃんが誘うってことは名字ちゃんすげーんだろ?」
「別に凄くない。てか高尾、近い鬱陶しい」
「相変わらずクールだなー、もしかして真ちゃんと同類?ツンデレ?」
「違いますから。ほんと、静かにして」


もともとへらへら笑って、あの真太郎と一緒にいられるような奴だったから、人見知りをせず何事も面白がる奴だとは思ってたけどこんなにもしつこいとは思わなかった。
男子とは喋らないこともないけれど、基本女子と話している普通の女子高生を目指していたのに高尾のせいで散々だ。

私は元来口が悪くさばさばした性格だ。特に男子に対して扱いが酷くなる。色素の薄い猫っ毛のせいでふわふわ見られることもあるが、それとは正反対だ。そのせいで本性を知って引かれたこともあった。だから最初の高校スタートダッシュをしくじらないように、徐々に自分の性格を出していこうと思っていたのに、高尾がしつこく話しかけてくるものだから知らず知らずのうちに出ていたらしい。だから嫌だったのだ。


「名字さんって、結構さっぱりしてんだね」
「びっくりした」


口々に言われるその言葉に、やばいと思った、がなぜかいい方向に転がってしまった。


「私好きだよ、名前ちゃんの性格。そっちの方がいい」


仲良くなりつつあった友達に、笑顔でそんな風に言われてしまい、とても嬉しかったのと同時に、高尾のおかげだと思うと少し複雑な気分だ。それからその友達とは距離がぐんと縮まり、今では一緒に行動している。





「……疲れた」
「お疲れー」


自分の椅子に座って頭をへたりと机にうつ伏せた。なんで朝からこんなにも疲れなくちゃいけないんだ。毎日のことだから、友達もすでに言葉が形だけになってきている。


「でも飽きないねー、高尾くんも」
「しつこすぎんの、あいつが。朝練あるはずなのになんであんなにパワー余ってんの」
「さすが期待のホープだね。秀徳の男バスって全国区の強豪なんでしょ?その中ですでに一年でレギュラーだって」
「へえ」


男子となにやら話しては大きな笑い声をあげている高尾の方を見た。真太郎はキセキだからレギュラーだろうけど、キセキではない一年でレギュラーとは凄い。


「名前も帝光で凄かったんでしょ?一回くらいバスケ部見に行けばいいのに」
「……やだよ」


友達も無理強いはせず、小さく呆れた溜息をついて数学の宿題を開いた。友達のこんな風に見守ってくれる感じが好きだ。それを見て、ばっと頭をあげる。


「あ、私今日当てられるんだけど!」
「やってなくても私も半分終わってないから見せられないよ」
「えー!ありさに見せてもらおうと思ったのに」
「残念でした。高尾くんにでも見せて貰えば?」


にやにやしながらシャーペンを持って解き始める。てかなんでそこで高尾が出てくんの。


「なになにー?俺になんか用?」
「…でた、高尾」
「眉間にしわ寄ってちゃかわいくねーぜ」
「うっさい。ねえ高尾、真太郎は」


ホックを外した学ランから彼の首が見えて、まだ暑いのかじんわりと汗が滲んでいるのが見えた。


「えー、真ちゃん?俺に用事じゃないの?」
「違うし。てかしんたろいないならさ、高尾今日の宿題した?」
「え、してないわ。名字ちゃん見せて!」


にかっと笑って私に言う。黒髪を赤いカチューシャで押さえている。男子高校生なのになんでこんなにも似合うのだろう。カチューシャなんて女子でも似合わない人がいるのに。私はその一人だ。


「やってあったらこんな質問してない。えーもうどうしよ、1時限目じゃん!今回応用でしょ?」
「まじかよー!あのセンセ俺のこと目の敵にしてんだよな」
「それは高尾が最初の授業から寝たからでしょうが」
「だってしょーがねーじゃん。あの天パ声低くてゆっくりだから眠くなんだよ」


あーだこーだと話している横で、いつの間にか集中して友達は自分の世界に入って問題解いている。とりあえずノートを開いて解こうとするも、自分の当たる場所は丁度大問の最後の問題。これは順番ずつ解かないと解けない。けれど1から解いている時間はない。


「……で、なんで高尾は自分の席に戻らないのかな?」
「んー?名字ちゃんの困ってる顔面白いから」
「うっざ。そんな暇あったらしんたろ探してこいよ」
「俺がどうしたのだ。相変わらず口が悪いのだよ。」
「お!真ちゃん朝練ぶり!」
「高尾うるさいのだよ」
「しんたろー、数学のノート見せて」
「ん?やっていないのか」
「俺も俺もー。真ちゃん見せて」


二人揃って真ちゃんに手を出す。


「お前らは二人揃って馬鹿なのだよ」
「高尾と一緒にしないでよ。ねーしんたろ、早く見せて」
「それが人に頼む態度か」
「しんたろー様よろしくお願いします」


棒読みすぎる私にはあ、と大きな溜息をつく。真太郎は溜息をよくつく。幸せなのだろうか。今日のラッキーアイテムのうさぎのシャーペンを胸ポケットに差している。きっと幸せだろう。


「仕方ない。お汁粉で手を打つのだよ」
「ありがとしんたろ!お汁粉ね!高尾が奢ってくれるって!」
「え、俺そんなこと一言もいってないんだけど」
「お前もどうせ見るなら同罪なのだよ」


自分の引き出しから出したノートを嬉々として私が受け取る。開けてみると几帳面な字がところ狭しと並んでいる。


「あーもう。名字ちゃん後でそのノート回してよ?」
「はいはい」


窓の外にある木々が揺れて、光も揺れてカーテンに波を作る。もうすぐ、衣替えの季節だ。


title by 喘息
20130314

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