これが僕の愛です/高尾 | ナノ
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「高尾!!!朝から五月蠅いのだよ黙れ!」


緑間の怒号が飛び交い、それに対して宮地先輩のパイナップル発言が飛び交い、それに爆笑する高尾にまた鉄拳が降りかかる無限ループ。その中で私は、マネージャーの近くを陣取って熟睡していた。

 
今、私たちは夏合宿に向かってバスに揺られている。






あれから紆余曲折あるようでなく、すんなりバスケ部に入ってしまった私は、最初当然の如くバスケ部員たちに受け入れられることはなかった。知り合いには歓迎されたが、涼太との件で私がバスケ部と関わりたくないと宣言したような状態で、今度は入ると抜かしやがるなんて許さねえと、そんな感情を持つ者が大半だろう。実際私は、心の底から秀徳の応援を出来るかといわれれば自信を持って即答することはまだ、できない。けれども、力になりたいとは思っている。
私が体育館にいれば、無視するか嫌な目線を向けられるか、戸惑っているような目線を向けられるかのどれかだった。
そんななか、相変わらず高尾はチャラいし、真太郎は私に助言を求めるし、宮地先輩は頭ひっつかんでパシるし、その三人と仲良くなれば、自然と他二人のスタメン先輩とも仲良くなる。またそれが余計に他の部員たちに良い印象を与えなかった。対応は冷え切るというよりも、遠巻きにされ、仕方なく私はレギュラーの初歩的な調整と、他の部員たちで聞いてくれそうな人にぽっとアドバイス出来たらいい方で、殆どが雑用と観察ばかりしていた。中学のときもそんな対応を受けることは慣れていたから、別段気にすることはない。
マネージャーともいえない立場だから、マネージャーにも嫌な顔をされるかと思ったら、意外にも大歓迎された。強豪校のマネージャーだからとにかく雑務が多く常に忙しい。それで人は強豪の分存在するのかと思えば、かっこいいからとか強豪だからという憧れだけで軽々しく入る人はすぐに雑務の厳しさに音をあげてやめてしまう。本当にバスケが好きな人か、根っからの奉仕心がある人しかやれないだろう。そのせいで万年人手不足のマネージャー業では、部員に何を思われていようと、中学の経験のおかげである程度のことは出来るから、戦力になると知ったら喜んで駆り出された。そのおかげで、男子バスケ部の数少ない女子とは仲がよい。男子に嫌われないより女子に嫌われない事の方がよっぽど嬉しい。


私が入って、二週間後に秀徳と誠凛の試合があった。そして、負けた。誰もが認める素晴らしい試合で、誰もが勝ちたいという感情の下に全力を出し切って、敗れた。それを同じ床の上で見ていて、私は驚いた。キセキが敵同士となってしまっても、久々に彼らの純粋な勝負を目の当たりにして、目頭が熱くなった。
これが、見たかったんだと、何かがとれたような気がした。


「名前、もっと強くならなければいけないのだよ」


次の日に呟いた真太郎の顔が、本気で悔しそうに見えて思わず笑顔になった。

そしてまた、真太郎は十分に多い練習量をさらに増やし、レギュラーもそれに続くように打ち込むようになった。それを見ていた他の部員が形振り構わなくなったのか、手っ取り早く強くなるためには意地を捨てるべきと思ったのかは知らないが、私にも助言を求めるようになり、そこからはあの期間が嘘のように普通に接せられるようになった。


そして今、夏合宿に来ている。真夏の太陽に出会いたくないと目を顰めるも、高尾は見えてきた海
の青さに感情が高ぶっているらしい。
もぞもぞと目を瞑ったまま動いて体制を立て直し、私はまた眠りに落ちた。


title by 降伏
20131111

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