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「今度こそお父さんがキッドを捕まえるんだから!」
「青子それ何回目だよ。どうせ今回も捕まえられねーよ」


ふふん、と笑いながら新聞を読んでいる。いつもの光景だ。


「今度は絶対よ!!」


あおちゃん、ほんとに毎回それ言ってる。私は曖昧な笑みを浮かべながら2人を眺めていた。

どうやら新しい予告状が警察に届いたらしい。朝からその話で持ちきりだ。
昨日キッドがあんな場所にいたのも、下見か何かの帰りだろうか。


「なまえちゃんもキッドなんて嫌いでしょ!?」


突然ずい、とあおちゃんに顔を近づけられる。いつの間にか恒例の好きか嫌いかの話になっていたらしい。私はあはは、と微妙な笑みを浮かべた。


「青子無理矢理はよくねーだろ!!」


黒羽くんも混じって私に言う。


「……なまえちゃん、正直に言って?青子、怒らないから」


黒羽くんの言葉で冷静になったのか、少しだけしょんぼりとした瞳で私を見上げる。うるうるした瞳で見つめるなんて、もうあおちゃんずるいよ。思わずあおちゃんに頷いてもいい気がしてくる。


「……正直に?」
「正直に!」
「……キッドは、好きじゃないよ」


その言葉にあおちゃんはぱあっと顔を輝かせ、対照的に黒羽くんはむすっと拗ねたようになる。


「けどね、」
「けど?」
「私、キッドのマジックは好きなの」


これまでのテレビでもわりと好きだったけれど、昨日のことで私の中のキッドの好感度は右肩上がりだ。あくまで、マジックだけど。


「キッドが本当のマジシャンだったら、私本気でファンになる」
「そんなにー?」


なんだか複雑そうな顔をしながらあおちゃんがうんうん唸っていた。
あのキッドのマジックはいつも予想の斜め上をいって楽しい。本気でお金をとれるレベルの奇術だと思うのに、もったいない。なんだか凄く現実的な話をしている気がする。
ふと、あおちゃんの後ろを向けば、黒羽くんが俯いて頭をがしがし掻いていた。


「どうしたの」
「なっ、なんでもねーよ!!」





(うーん、思えばなんでキッド私の家知ってたんだろ)
(くっそ、あんな顔で好きとか、殺し文句だろ)


20140727

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