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真っ青な空が、降ってきそうなそんな爽やかな日。
相変わらずこの学年名物の追いかけっこが繰り広げられていた。廊下に響く2人の声。それにつられるように叫ぶ若い先生の声。


「待ちなさい!こら快斗ー!!」
「待てといわれて待つバカがどこにいるかよ、バーカ」


また顔を真っ赤にして女の子が走り出す。
ああ、なんでこんなにも煽ることばかり言うのだろうか。
けども、それが2人の良さといえば、良さなのかもしれないな、と的はずれたことを考えながら、携帯を耳に当てる。


「もしもし?」
「よう。今大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ、休み時間だから」
「なんか、騒がしくねえ?」
「あー、それは気にしないで」


思わず苦笑いする。廊下の窓を開けて、そこから中庭を見下ろしながら話していても聞こえてくるらしい。
桜が散り、青々と繁る葉桜が、てらりと日光を浴びて輝いている。


「でさー、お前本借りに来たがってただろ?明日俺空いてるから、どうかな、と思って」
「ほんと?明日なら私も大丈夫だから行く行く」


手摺りに思わず肘をおく。少し静かになった気がする。ただの不特定多数の喧噪が遠くに感じた。


「あ、でも私工藤くんの家知らないよ」
「俺が迎えに行くから」
「そんな悪いよ。電車代嵩むよ」
「いいから。黙って従っとけ」


呆れたようにそういう彼の声はボーイソプラノで、この人は時々扱い酷い気がする、とむすっとしながらも、その言葉に甘えることにする。


「まーあー、工藤くんが勝手に使うんだからいいけどー。」


突然お昼おごって、とか言われても私今金欠だから払いたくないからね、といえば、ばっかじゃねえの、とさらに呆れた声を出された。


「とにかく。また時間はメールするから、ちゃんと用意しとけよ」
「分かってるよ」


んじゃ、と聞こえたときに信号の音が聞こえた。そうかもう小学生は帰ってるのか。いいなあ、と思いながら席に着く。


「なあ、今電話誰だったんだよ?」
「なっ、黒羽くん!」


突然顔をのぞき込まれるのは心臓に悪い。


「なーんか、超笑顔で話してたから気になんだけど」
「ただの友達だよ。わたし笑顔で話してた?」


うーん、むっとしてたのが多かった気がするんだけども。


「もしかして、彼氏?」


今度はあおちゃんがきらきらした目で顔を近づけてきた。


「違うよ!」
「ふーん、でも男の子っぽい!」


その予想はどこからくるんだろう、あおちゃん。
私の机に両手で頬杖を見つめてくるこの子はとっても可愛くて、黒羽くんが好きになるわけだ。
あ、黒羽くんも反対方向にいたんだ、と顔を向ければ、あおちゃんのきらきら顔とはまた違う拗ねたような顔。何故だ!と疑問に思いながらも、分からずに首を傾げる。
というか、2人とも始業のチャイム鳴ってる。


「えっと、男の子だけど、」


小学一年生と高校二年生、って年の離れた兄弟にしか見えないよなあ、と考える。


「やっぱり!」


また何か言いたそうな顔で、見つめてきたと思ったら、ちょうど先生がきて黒羽くんに引きずられながら戻っていった。






(ほら!快斗早くしないとなまえちゃんとられちゃうよ!)
(うっせ、わーってるよ!)


20140720

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