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いつだったかは知らない。
雲が一つもなくて、風が吹いていて、ただひたすらに透明な空が遠く遠くにあった。空が遠いなんて当然だけれど、いつもよりも遠く思えたのだ。


白に黄色に、黒。


ぶわりと開け放たれた窓から空気が入り込む。それに連れて広がる柔らかなカーテン。暑すぎることもなく、寒いわけでもないのに、朝つんと鼻の奥が痛くなった。廊下側の私は、ふと一番遠い窓を見た。光のせいで透けているのかと思う金色を纏ってカーテンが揺れる。そこから見えた後姿。歯磨き粉のような鋭いミント味よりも優しげな石鹸が似合うそんな日だった。空を見上げたその人は、真上にある空を高く見上げていて。頬杖を突きながら、顔も見えていないのに、さわさわと揺れる髪の毛が儚かった。まるで、その人が空に消えてしまうみたいに。あまりにも遠くて透き通るような空だったから。行かないで、と思わず手を伸ばしそうなくらい、背中のその人は焦がれるように空を見上げていた。

その情景が、綺麗、とか、そんなありきたりな言葉じゃなくて、もっと、こう、言うなら、夢、のような、天国ほど高飛車ではないけど、写真家が風景を切り取ると表現するみたいに、止まって見えたのだ。


白と黄色と、黒。


いつの授業で、先生が構わず話し続けていたような気もするし、チョークの音とシャーペンの音が静かに響いていたような気もするけれど、覚えているのは匂いと色とその景色だけで、いつからかしれない、たったそれだけの、一瞬網膜に貼りついたそのシーンだけが今でもちかちかと悪戯するように脳内を瞬く。

風が一度波のようにひく。音が再び現れる。呼吸がじわりと吹き出す。すとんと重力が戻る。

そして気づいた。
その日の、お風呂の中で。


私は、焦れったい感情を持った。



20131223

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