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少年の携帯に残った右手の指紋と、焼死体が一致した。欠片ほどしか残らなかった誰のものとも判別し難い骨に名前をつける唯一のもの。
自身の目で確かめ、自身の手で診断書を書き、自身の口から報告した。皆が絶望に打ちひしがれる様子を、この瞳で見つめた。

皆が死んだように、まるで信じられないものでもみるようにひそひそと噂話をした。
それだけ彼には、幻のようなカリスマ性があって、今追っている組織に対して並々ならぬ貢献をしていて、簡単に死んでしまうような、そんな柔な人物ではなかった。
FBIの組織の一員ではあるが、私はジョディや彼のような捜査官ではない。1人異質の存在である私は、変わらずに手を白衣のポケットに突っ込み、だらしなく自分の砦に篭っていた。


「ナマエ、そろそろよ」


真っ黒なスーツに身を包んだジョディが顔を見せた。いつもの真っ赤なタイトスーツも、真っ赤なルージュも封印である。


「んー」


口に咥えた煙草が燻ぶる。真っ白な空間に灰色の光がブラインドから差し込んでいた。


「医務室は禁煙でしょう。医者のあなたがそんなのでどうするの」


呆れたように言うジョディもいつもよりは覇気がない。そういえば、少し痩せた。


「って、あなた吸ってたかしら」
「時々ね」


黒の灰皿に半分残った煙草を押しつぶす。ぐしゃぐしゃになったパルプが粉々になる。


「さあ、行きましょうか」


重い腰を上げる。ダークブラウンのロングヘアが邪魔くさい。


「あなた、白衣は」
「私はこのままで出るわ」
「ナマエ、」
「ジョディ、どうせあいつの形だけのものよ」


彼が、そんなことにこだわるとは思えない。
この姿でしか私達は会ったことがないのに、今更である。
ジョディは、諦めたように溜息をついて私の前を歩き始めた。
少しだけ立ち止まって部屋を確認する。
かつんと、靴の音が響き渡る。
ジョディの黒のパンプスの音ではない。いくら黒といっても、こんな時には場違いな艶やかな私のピンヒール。
どこまでも不謹慎だと、嘲笑いながら、小さく吐き捨てた。


馬鹿馬鹿しい。


20150704
title by 東の僕とサーカス