06.5

「ちょっと!ロナルド!見えないぞ!」
「いいから!来たのか?サテツはちゃんとリードしてるか?」
「できてるわけないわよ。あら、みんながそんなに言うからどれだけ美人かと思ったら案外フツーね」
「お前より全然マシだろうが!」

公園の木陰に隠れているのは、新横浜ハンターズギルドの3人。
ロナルド、ショット、そしてこのあたし、シーニャよ。

最近、うちのサテツちゃんが初デートとやらをするとのことでギルド中が盛り上がっているので、あたしも今日観察に来たというわけ。まあ、無粋なことはしたくないけれど、ハンター仲間がどこの馬の骨とも知らない女にダマされるのも不本意だからね。
それがあの心優しいサテツちゃんだからなおのこと。

公園に現れたサテツちゃんと相手の女をこっそり観察。
フーン。まあ想像していたより美人ではないけど、普通じゃない。ファッションも、まあ合格。自然体で媚びてる様子もないわね。サテツちゃんも力抜けてるみたい。
まぁ、まさかのピクニックデートをOKするくらいだからね。心は広そうね。

あーあ、あんなに平和そうに二人で笑いあっちゃって。

「何話してるんだ?聞こえるか?おいロナルドもう少し近く行って聞いて来いよ!」
「できるかバカ!バレるギリギリのラインだぞ」
「しかし、名前さん今日は服装がずいぶんラフだな。サテツ脈ないんじゃないのか?」
「確かに…デートと言ったらワンピースだよな?胸元が開いてるやつ…」
「もしくは…ノースリーブのドレスとかな…」などと的外れの分析をして盛り上がる男どもに、はあ、とため息をつく。

「あのねえ、こんなふつうの芝生の公園にキメキメの恰好でドヤ顔で来てる女だったらひっぱたいてるわよ」と肩をすくめる。
「大事なのはTPOよ。抜け感あっていいじゃない。サテツちゃんに気を許してる証拠じゃない?」と解説してあげる。
まあ、こんな格好のあたしがTPOを語るのもナンだけど…。
「そういうもんかね?」と顎に手を当てるロナルドも、なんだかんだで微笑ましそうにサテツちゃんを見守っている。

さて、サテツちゃんと彼女候補ちゃんは、大きな口を開けてサンドイッチにかぶりついて、二人して顔を汚している。二人で笑いあって、あ、彼女がサテツちゃんの頬を拭ってあげて、また一口。
サンドイッチをまじまじと二人で見せ合って、何やら真面目な顔で話し合ったと思ったら、サンドイッチを交換してまた一口。そしてまた笑顔と……。

「ぐおおおおお何なんだこの甘ったるい呑気な光景は!!見ていられん!」と、ショットが真っ先に音を上げて崩れ落ちる。ま、分かるわよその気持ちも…。毒気抜かれちゃうわよね…。
「サテツ楽しそうだな〜名前さんも」と、ロナルドはお兄さん気分なのかしら。
それにしても全く平和な光景ね。つまんない。

「はーあ。ぜ〜んぜん普通の子じゃない。いいんじゃない?これ以上見てても何も面白いこと起きなそうだしアタシ帰るわよ」とため息をひとつ。
「あんたたちも下世話なことしてないで早く帰りなさいよね」と言い残して、踵を返して立ち去った。

きっと今焦って観察しなくても、これからもゆっくり観察できるようになるわよ。と心の中で呟いた。
オネエの勘って当たるのよね。なーんてね。

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