なみだがきらめく 前



同じ学部の誰々がカッコいい、とか。
サークルのナントカ君と仲良くしたい、とか。

自分には縁の無いことだけれど、少しだけ羨ましいと思ってしまう。
傍で同じ時間を共有して、一緒に楽しんだり、のんびりしたり、照れたり、ときめいたり、手をつないだり、好きって言ったり。
私だってそういうことをしたいと思う人はいる。ただ、簡単に会えるような距離じゃないだけで。

同じ部活のもう一人のマネージャーの子もそんな羨ましい恋愛をしているようで、同回生のクライマーの男の子の話題をしょっちゅう出すから、そうなのかなって思って聞いてみた。


「え?ん〜…気には、なってるよ、今…でも、それだけ」


ちょっと顔赤くしながら答えるところなんて、完全に好きになってるそれじゃないか、と思いながら今度は、告白しないの、と聞いてみた。えー?と裏返る声にはまだ気恥ずかしさが勝つものの、近々真剣になりそうな、いずれは、という感触だった。


「だって、まだよく知らないし…向こうもいきなり告られたらさー、びっくりするじゃん」
「付き合ってから知っていくのもいいと思うけど」
「本当ー…?あ、」


その子は私の向こう側に声を投げかけた。


「荒北先輩、どう思います!?」


荒北さんは、部室の奥の椅子でずっと我関せずと雑誌を読んでいたのだ。いきなり話を振られたからか、興味なさそうになァにが、と呟いた。

彼女は、だからーと言って事のあらましを説明する。今気になる子がいて、まだ仲良くなってる段階だけれど、そんな女子から告白されるのはどうなのか、と。口をへの字に曲げた荒北さんが、こちらを一瞬だけ見た。ぱちっと合った眼はすぐに逸らされて、荒北さんはやっぱり興味無さそうに、


「…いいんじゃなァい」


と言った。


「先輩、真面目に考えてくださいよぉー!」
「アァ?俺ァいつも真面目だよ、バァカチャン!」


ったく、と言いながら荒北さんは雑誌に視線を戻す、早々に話を切られてしまって、どこがですかぁーと不満そうにその子がまた唸った。
もう一度荒北さんを見る、しかし既に雑誌に集中しているらしく、こちらを見そうには無かった。


「ほら、荒北さんも賛成だって」
「どこがよ!すごい適当だったじゃん!」


鋭いツッコミに、関西出身の私でも思わず感心してしまう。拍手しようか迷ってる間に、その子はんんっと伸びをして、大きな、それでいてどこか吹っ切れたような溜息を一つ吐いた。


「…もうちょっとしてから考える!脈アリかどうか見てからでも遅くないっしょー」
「そっかあ、頑張れ!」


素直な応援の気持ちを表現して、これでこの会話は終わると思った。


「あーあ…幸せだねーなまえは。彼氏いてさ」




20141120










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