両想いラヴァーズ!!(拍手ss)



駆け込んだ食堂はしんと静まり返っている。階段を登り、扉の前で立ち止まった。ランプが二つ微風に揺らされている。私はライナーに向き直って、話を切り出そうとした瞬間に太い二本の腕に肩を掴まれ、そして、目の前の厚い胸板に顔を押し付けることになった。つまりはライナーに抱きしめられたということ。もう早速何が何だかわけが分からない。


「ち、ちょっとライナー、なな、な、何!?」
「すまん、つい」


こうして身体を密着させたのは、あの訓練中の事故以来だと思う。あの時は私の不注意だったけど、今は違う。はっきり、ライナーの意思による抱擁だと分かって顔が熱くなった。ただ、いくら私が恥ずかしがって暴れても離す気はないらしく、腰に手が回されてしまう。ライナーの熱で、自分が溶けるかと思った。


「あ、あああのわたし、ライナー、に…話があって、こ、ここまでっ」
「悪いが、もう少しこのままいさせてくれ」
「ひ、ひえぇぇ…!」


そのまま抱きすくめられて、後頭部からうなじにかけてゆっくり撫でられる。緊張のあまり、身体が震えてきた。そろそろ放してもらわないと、また肝心なことを言えずに終わってしまう…!


「だ、だめっ!お願いだから、聞いてライナー」
「嫌だ。…聞きたくない」


ぐっと胸板を押し返して顔を上げると、気まずそうにそっぽを向かれてしまい、予想外の事に固まる。き、聞きたくないって…何で?っていうか、返事をするためにここまで呼んだ私は一体どうしたらいいの。


「え、な、なんで?どうしてそんな事、言うの」
「なあ、好きだ。俺はあんたが、好きだ」
「なっ何で今言うのよ…!」


ああ、また「私も」と言う機会を逃してしまった。その一言を言いたくてわざわざここまで連れて来たのに、私の口は恥ずかしさのあまりぱくぱく開閉するしかできないでいる。


「…離れたくないから」
「え?」
「すまない、恋愛ごっこでも構わない、だから、まだもう少しだけ、一緒にいさせてくれ…」


縋るように抱きつかれて、その恥ずかしさにはまだ慣れなかったけれど、頭の中は冷静だった。どうしてライナーが泣きそうになりながら私の言葉を遮ろうとするか、ゆっくり考えて、ますます自分は今日、ここで、ちゃんと、想いを彼に伝える必要があるのだと思った。それは覚悟に姿を変えて、私に言葉を紡がせる。


「…私、ごっことかじゃなくて、その…ライナーと、ちゃんと付き合いたいと思ってるんだけど。それでも…嫌?」


好きと言ってないのに、やばい、これすごく恥ずかしい。普段はきりっとつり上がってる眉が情けなく下がったままのライナーの顔がなんだか可愛い、とぼんやり思う。


「………すまん、今なんて?」
「あーもう!一度しか言わないから、ちゃんと聞いてよ?」


とりあえず腰に張り付いたままのライナーの手を退かして、対話のために距離を取る。深呼吸して、既に耳を真っ赤にしたライナーに向き直った。


「…好き。ライナーが好き。待たせてごめん」
「ほ、本当にいいのか?俺はてっきり…断られるかと」
「…だから私に話をさせたくなかったの?」


罰が悪そうにライナーが頭を掻く。賢い頭を、何と言うか、ちょっとこじれた方に使ったんだなと分かって、とても可笑しくて私は大笑いしてしまった。


「そ、そんなに笑うことはないだろう」
「だ、だって…ごめ、ごめんっ…は、ははっライナー、かっ可愛いね…!!」
「く、この…!良い加減にしろ!」


勢い良く抱きついて来たライナーの首に腕を巻きつける。ふわっと浮遊感がして、ライナーに抱き上げられた。彼の顔を見下ろすなんて滅多にできないだろう。広いおでこにちゅっと唇をくっつけると、ライナーが顔を真っ赤にしてたじろいだ。


「な、何をっ…」
「ちょっと、なんで照れるのさ。いつも自分がやってるのに」
「俺からやるのは、いいんだ!」
「なあに、それ」


ますます可笑しい。ライナーは積極的に私にアプローチして来たくせに、攻められるのは苦手らしい。赤い顔したままのライナーが私の名前を呼ぶ。低く良く通る声で、私の名前を。


「好きだ」
「私も、好きだよライナー」
「一つ…頼みがあるんだが」


目を閉じてくれないか。


そう言いながら見上げてくるライナーはやっぱりカッコ良くて。恥ずかしくて恥ずかしくて、緊張のあまりぎゅっと目を瞑ると、そんな固くなられるとこっちも照れるな、と声が聞こえてから、唇にそれが当たる感触がした。いつもおでこや頬に当てられる、ライナーからの愛だった。





両想いラヴァーズ!!
「ふ、ファーストキスでいきなり舌を入れるのはどうかと思うの…!!」「え、そうか?」








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