02.(襲っちまうぞバカヤロー…!)



一見ありそうでなさそうなメンツが再集結した。というのも、以前俺とベルトルトが晩飯をご馳走になったお礼として、今度は俺の家にあの二人を誘ったからだ。下心が透けないようちゃんとジャンも誘った俺、偉い。飯食いにうちに来ないか、があんなに難しい言語だとは思わなかったが、誘った時のなまえの嬉しそうな顔と言ったら…ああ、良かった。生きてて良かった…!!

荒ぶったところでタイミング良くチャイムが鳴る。きっとなまえと会ったスーパーまで二人を迎えに行ったベルトルトだろう。扉を開けると三人が各々の挨拶をする。しかも明日は休日ということで、気前よく酒まで用意してくれていた。適当に座らせて飯の準備をする。


「「いただきます」」
「すげー回鍋肉だ、凝ってんなーあ」
「おいしいっすライナーさん」
「豆板醤ちょっと使いたくなってな」


俺が作った回鍋肉とスープをうまそうに食べてくれた。もしなまえと結婚したらこの光景が毎日見られるんだろうかとか考えてたら向かいのベルトルトに足を蹴られた。痛い。


「ライナーどうかした?」
「…いや、何でもない」
「ライナーって料理うまいんだな」
「お前ほどじゃねえよ、ジャン」
「ベルトルトもうまそうだもんな、もしかしたらこの中で一番下手なのって…」
「おいジャン、何こっち見てる」


なまえがジャンをギロリと睨んで奴の皿から豚肉をつまみ上げた。ジャンの抗議虚しくそれは彼女の口に放り込まれる。ジャンの悲痛な声に思わず笑いが漏れた。


「てめー何しやがる…!!」
「ジャンが失礼な事言うから食べられたくないってお肉の声が」
「してねぇーよ!!あーあ、なまえあーあ」


子供みたいな論争をしながらジャンがスーパーの袋から缶を何本か取り出して配った。俺にはビールが渡されて、本当に将来こうして食卓を囲んだりするんだろうかとふと思うと、なまえのことを考える前にまたベルトルトに蹴られた。痛い。


「どうしたのライナー」
「………解せん」
「じゃーゴチになります、乾杯ー!」
「いえーい」


缶を合わせてからビールを一気に喉に通した。この苦味がビールの良さなんだが、なかなか理解されないのが惜しいところだ。なまえもあまり飲まないらしいしな…

しばらくご飯を食べながら酒を飲んで、ジャンとなまえは早くも3本目に突入していた。ベルトルトは自分が酔いやすいのを自覚してか、1本の缶チューハイをちまちま飲み続けている。俺も2杯目に選んだパックの焼酎を半分程空け、かなり良い感じに酔っていた。

なまえがベッドに凭れてのろのろと瞬きをする。ジャンがおい眠いのか、と呼びかけるが、んーと唸りながらシーツに鼻をぐりぐり押し付けるだけだ。その仕草がまた可愛かった。


「おいなまえ、寝るなら帰るぞ。それかせめてベッド借りてちゃんと寝ろ」
「んー、ライナー、ちょっとベッド貸してください」
「お、おお?適当に使え、よ」


俺の返事を聞く前にのそのそとベッドに登り、掛け布団の上で丸くなる。そのまま枕を丁度いい位置に動かして、なまえは目を閉じた。ジャン、酒無くなっちまったとか呑気に言ってるけど、お前何て事を…
好きな女が自分のベッドで寝てるなんて状況に心臓が高鳴る俺の気持ちを知ってか知らずしてか、ジャンが更にとんでもない事を言い出した。


「ちょっと追加で買ってくるわ。コンビニくらいならまだ開いてるだろ」
「僕も行こうかな、外の空気吸いたいし」
「なんだどっちも出るのか、じ、じゃあ俺も…」
「ライナーはいた方がいいよ、家主だし」
「え?」
「ああ、なまえが起きた時誰もいなかったら困るからな。頼む」
「え?え?あの」


財布を持った二人が、俺が抗議できるようになる前に扉を閉める。バタン、という無情な音が響き渡って俺の部屋には俺となまえだけが残された。ジャンはともかく、ベルトルトなんか絶対確信犯だ。あいつ許さねえ…!!


「見るな、見るなよ俺絶対見るな、駄目だ駄目だ駄目だ」


口から溢れる抑制の言葉虚しく、俺の視線はゆっくりベッドへ向かっていく。思わず頭を抱えた。ああ、ああもう。
折り畳まれた足に、顔の前に添えられた手。その顔は無防備で、まだまだ幼さが抜けていなくて…

心臓が早鐘を打つのが分かる。俺が赤面してるのはきっと酒のせいじゃない。その姿から目を反らせなくてしばらく凝視する。俺より一回り以上小さな身体とか、骨の浮き出た手首とか曲線を描く背中とか、ズボンか覗く足首とか、今ならパーツ一つどれをとってもか可愛いと思えてしまう。


「って何を考えているんだ俺は!!」


小声で叫ぶ。いつの間にかにじり寄っていたベッドから飛び退いて、額を押さえた。頼む、二人とも早く帰って来てくれ…!!!






(襲っちまうぞバカヤロー…!)
(僕とジャンが部屋に戻ったら何故か一心不乱に片手腕立て伏せをしている男が居たので、二人ほぼ同時のタイミングで「キモッ」って呟いた事、ライナーにはまだ言ってません。)





(お題配布サイト「TOY」★恋人同士で飲む5題 より)








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