決心ディターマインド!(拍手ss)



あれから私とライナーは少しずつ接するようになった。ご飯を時々一緒に食べたり兵法の復習に偶に付き合ってもらったり、入浴から消灯時間までの少しの間稀に話したり。ライナーとの関係は概ね良好だ。ただ一つ、一つだけ問題が生まれたとするならば…


「…で、いつ付き合うの?」
「相変わらず言葉の切れ味がすごいね、アニは」


人気の無い食堂の椅子に座る、私の友人は頬杖を付いて気怠そうにこっちを見ている。その仕草も大人びた彼女に似合って、グッド。


「大方言う機会を逃したってとこだろうけど…」
「…だって、ライナーが!」


私の予想したよりもこう…スキンシップが激しいんだもん!
勉強してる時さりげなく手を握られたり、ご飯食べてたら急にほっぺを拭われたり、二人で喋ってる時に、ち、ちゅーして、きたり…唇にじゃないけどね!ないけど、なんだか思ったより積極的すぎてびっくりしちゃったよ!

おかげでみんなは私たちが付き合ってるものと思ってるけど、肝心の私はまだ告白の返事をできていない!何度か好きだってことを伝えようと思ったのだけれど、その度にライナーがおでこにキスしてくるものだから恥ずかしくて何も言えなくなってしまうのだった。


「…あの筋肉男やっぱり一度締めた方がいい?」
「止めて、アニ止めてそんな物騒な事を、貴女ならできそうだから」
「そうでもしないと、あれ、大人しくならないよ?」


最近の私の顔は赤くなったり青くなったり忙しい。立って準備体操しようとするアニをなんとか宥めてから、もっと穏便に話を聞いてもらう方法はないかと相談する。


「思い切って先手必勝…とか」
「え?どういうこと?」
「だから、される前にしちゃえば良いんだよ。キス」
「…な、ななななななななっ…!!」


いきなりの大胆な作戦に顔が真っ赤になる。あ、アニのはれんち!と叫ぶと、な、とどもって、発案者のアニですら頬を染める。


「わ、私はあんたのために考えて…!」
「も、もうちょっと遂行可能なの考えてよ!」
「さっき否決されたでしょ!?」
「充分無茶だったよ!」
「ライナー締めるくらい楽勝だし、本当だからなんなら試しに今から」
「お願いだから暴力沙汰には発展させないで…!!」


真っ赤な顔を突き合わせて、二人して荒くなった息を静めようと深呼吸した。アニは軽く咳払いして、右目にかかった前髪を梳いて撫でる。


「でも、やっぱりキスするならちゃんと言ってからが、いいかも…」
「あ、そ、そっか…ごめん」
「う、ううん、私の方こそせっかく考えてくれたのに…」


恋愛事を考えるには、お互い経験値が少なすぎたようだ。アニは困ったように表情を曇らせるけど、私のために一生懸命考えてくれたんだから、こんな嬉しいことは無い。にっこり笑いかけるとその意図は伝わったようで、力無くだけど、アニも笑ってくれた。


「ありがと、アニ」
「とにかく、話を聞いてもらうよう説得するしかないね」
「うん、今度話す時頑張ってみる」
「いざとなったら呼んでね」
「…本当にいざとなったらね」


くすくす笑って、そろそろ寝ようかと食堂を後にする。もうほどなくして消灯時間になるだろうから、とにかく今は早い所宿舎に戻って、明日の自分に頑張ってもらうことだ。





「…あれ?」


女性側の宿舎に見慣れた姿を見つけて、思わず声が漏れる。その人物は私たちに気づくと、組んでいた腕を解いて片手を挙げてくれた。


「ライナー!どうしたの、こんな所で」
「よう。消灯時間まで時間があったから、少し話せればと思って」
「ごめん、さっきまで食堂でアニと喋ってて…」


ライナーと話せる時間はさほど取れなさそうだ。本当にごめん、と謝る私をあの優しい瞳で見つめて、別に構わないと頭を撫でてくれる。柔らかい手つきにも優しさが込められていて、きゅん、と胸が高鳴った。


「じゃあ、私は先に戻ってるから」
「うん、アニ今日はありがとう」
「………チャンスだよ」


アニは私にしか聞こえない声量でぼそっと呟く。えっ?と聞き直しても、彼女は振り返らず宿舎の扉をくぐってしまった。さっきの話の流れからして、今のってもしかしなくてもそういう意味…?つい考えてしまって、ライナーが目の前にいるのに、いや、いるからこそ顔が赤くなっていって、くらっと眩暈がした。


「どうした?顔が赤いが、大丈夫か?」
「あ、あの、ライナー」
「ん?」


同期が何人か、宿舎に入って行く。ここでは彼女たちだけでなく、向かいの男性宿舎からも丸見えだ。窓から覗いてる奴にも扉の影からこっちを伺う奴にも私は気づいてる。気づいているからこそ、自分が今から言おうとしていることが自分にとってどれほど照れ臭く、勇気あることかを改めて自覚し、顔をますます赤くした。何でもない、お休みと言って、宿舎に駆け込んでしまえたら。

…でも私は、ここで逃げるわけにはいかない。頑張って橋渡ししてくれたアニのためにも、私を好きになってくれたライナーのためにも、彼女がチャンスと言ってくれたこの機を逃すなんて、絶対しちゃいけない。


「っ、こっち来て!」
「お、おいっ!?」


ぐいっとライナーの腕を引っ張って、私は走り出した。誰もいない場所を目指して、一つの決意で頭を一杯にしながら。わけも分からないまま、私に合わせて走ってくれる彼はやっぱり優しい人だった。

呑気に歓声を上げた男子諸君、見回りに来た教官に大目玉食らっても知らないからね!





決心ディターマインド!
さっきまで私とアニが話していた食堂に誰もいないことは私が一番良く知ってる。ここまで来たら、もう後戻りはできないぞ、自分!









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