求愛プロポーズ!(拍手ss)



ご飯を食べ終わって宿舎に戻ると、私のベッドの上に紙切れが一枚落ちていた。二つに畳まれた小さいそれをそっと開くと、綺麗な字で文字が書かれていた。


『この前言っていたことについて話したいことができた。食堂裏まで来て』


字と内容から察するに、これを書けるのはアニしかいない。ということは、彼女が先日申し出てくれたように、あの事…ここ最近ライナーがずっと私を見ている真意…について、何か分かったって事なんだろう。このメモに気がつかないままお風呂に入ってしまったから、待たせていると思って、生乾きの髪の毛もそのままに外へと急いだ。





食堂裏にはアニの姿は無くて、しばらく待つことにした。
そういえば、ライナーについて分かったなら部屋で話を聞けるのに、どうしてわざわざこんなところに呼び出したりしたんだろう?


「アニ〜…?まだ来てないの…?」
「申し訳ないがあいつは来ないぞ」
「ひっ…!?」


驚きのあまり思いっきり肩を震わせてしまった。低く良く通る、と言えば彼女の声を指すようにも聞こえるけど、その実は全く違う男の人のものだった。ライナーがどうしてここにいるの?なぜアニのことを知っている?予想外のことにカッと顔が熱くなって、色んな疑問で頭がぐるぐる回る。


「ど、どうしてここに、ライナーが」
「アニに発破をかけられてな。男らしくはっきりしろって」
「もしかしてアニがここに呼んだのって」
「俺が頼んだ。騙すような真似をしてすまない」


ライナーが謝ってきたけど、何を言ってるかよく理解できない。とにかく、アニは来ないってことだけ苦労して飲み込んだ。


「じ、じゃあなんでライナーは私をここに呼んだの」
「俺はあんたに言わなくちゃいけないことがある。だからアニに協力を仰いだ」


私は先日アニが口にした可能性のことなんてすっかり忘れて彼の言葉に怯えていた。もし、お前は兵士に向いていないから諦めて開拓地にでも行っておけ、とか言われたらどうしよう、と。成績上位者である彼に言われたら、何も言い返せないじゃないか。


「好きだ、付き合ってほしい」


でも、成績には現れていなくても、私だって昔より成長したところがたくさんあるはずだ、きっと。それは身体的な面よりも精神面の方が大きいだろうし、目の前の彼からしたらそんなもの鼻で笑える程度のものかもしれない。それでも私はこの訓練を乗り越えて見せる。いくらライナーが私に兵士たる資格が無いと判断しても訓練兵としてここは引けな………あれ?


「…ごめん、今なんて」
「何度でも言おう。あんたが好きで、気づけば目で追うようになっていた」
「………ええぇぇぇえええっ!?!?」


ぶわあっと顔に熱が集まって、一気に心臓の音が早くなってしまう。いつぞやのアニの予想がまさか当たっていたなんて。私は今になって漸く、どうしてこの場にアニがいないのかを理解した。


「そこまで驚かれるとは」
「えっえ、だって私、ライナーと喋ったこと、無い…よね?あんまり…な、なんで私…」
「一番の理由は…あんたの笑顔が、素敵だと思ったからだ」
「ふぇっ!?」
「ああ、訓練で成功した時のすごく嬉しそうな顔にまず惹かれて、あと食事中よくアニと話してるだろ?楽しそうに笑ってて、いいなって。他にも」
「わーっもういいよっ!分かった、分かったから!」


…こんな顔から火が出そうなくらい恥ずかしいことを、どうしてライナーは簡単に言えてしまうんだろう?私が言葉を遮っても、じっとこちらを見つめてくる目は変わらなくて。


「…返事は」
「え?へ、へんじ?」
「ああそうだ。なんで俺があんたをずっと見てるか、これで分かったろう?次はそっちの番だ。俺の気持ちにどう答えてくれるんだ?」
「え、ぁ、うわうわ、わっ…」


ライナーがじりじり距離を詰めてくる。だんだん食堂の壁に追いやられて、あっという間に背中に木造の壁がぶつかった。びっくりしてる間にも顔の横に手を置かれて、逃げ道を塞がれてしまう。彼の特徴的な鼻が近づいて、鋭い両目でじっと見つめられて。頭の中がもう、パンクしそう。


「イエスかノーかだけでいい」
「わ、わたし、私は…!」
「………」
「…ぁ、アニ!」
「えっ?」
「、っ!!」


ライナーが私の視線を追いかけて誰もいやしない背後に気を向けた瞬間。



…私は素早くその腕から抜け出して、全速力で走って逃げたのでした。





求愛プロポーズ!
「アニ!どうしよう!!」
「おかえり、ずいぶんと早かったね。(やっぱりライナーの奴駄目だったか…)」
「…逃げてきちゃった。」
「え?ちょ、逃げ…え??」









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