ライナーの二の腕が素晴らしい



「今日のライナー何かかっこいいな」


本来なら講義が始まっている時間だが、昼過ぎの部室には数人人がいた。共通点は、履修の関係上この時間帯に講義が入っていない事。同じ学部且つ同じ学年である俺たちは必然的に授業の空きも被り、部室で会う事が度々あった。そんな中で、だ。この、俺の正面に座って隣のライナー…ちなみにライナーはこいつに惚れてるわけだが…まあ、そのライナーに対して、アホみたいにぼーっとしながら何の気無しに呟いたのは、紛れも無く俺の幼馴染であるなまえだった。…見ろ、ライナーの奴首まで真っ赤だ、ああ、何て分かりやすい。


「………いきなりどうしたんです?」


呆れを全面に押し出しながら聞き返す事ができたのは、昼飯を食べ終えた後購買で買ってきたパンを食べているサシャだった。思考停止している男二人よりも、よっぽど頼り甲斐がある。…今だけ。


「んー、何だろ、分からん!」
「分からんって…お前、そんな無責任な…」


なまえの隣では、両手で握り拳を作ったライナーが身を屈めながらものすごく震えていて何だか気持ち悪い。恐らく俺には理解できないほどの喜びが、今あいつに襲いかかっているのだろう。なまえが好きらしいから、褒められてこうなるのも仕方が無いのか。それにあいつの言葉選びが直感的すぎたのも原因だろう。


「でもなー、なんかいつもと雰囲気違う気がすんだよ」
「…だとよ、おいライナー。何か心当たりは無えのか」


しばらく放っておいてやりたかったが、なまえがライナーをじろじろ見てるのでこれ以上変な姿を晒すのも、奴の本意では無いだろう。…いや、案外『そういうの』も楽しめる人かもしれないが。


「…い、いや…俺は特に、何もしていない」
「そう?…ライナー顔赤いよ?」
「ああ、ものすごく暑いからな、身体が恐ろしく熱い」


あー今日太陽強いもんなーと言って呑気になまえが笑う。俺たちは昼からここにいて、この部屋にはクーラーで冷風が送られているから暑いわけが無いというのに、幸か不幸か俺の幼馴染は馬鹿だった。誤魔化すようにシャツの胸元を摘まんで扇ぎ始めたライナーを、またなまえがじいっと見つめる。奴の顔の赤みは当分引きそうにない。


「…あ、分かった」
「おう、早く言ってやれ」
「腕捲りが、なんかキた」


俺もサシャも、もちろんライナーもその発言の意図を一瞬測りかねた。ふっとライナーに視線を移してようやく理解する。ライナーは部屋に来る時から高い気温に我慢できず、シャツの袖を肘の上まで捲りかなり短くしていた。おかけでラグビー部並に筋肉が付いた逞しい二の腕が、ほんの少し覗いている。


「………なに、お前二の腕フェチなの」
「そうかも、今気づいた」


すっきりした、と言いながらもなまえの視線は完璧にライナーの腕に釘付けだ。フェチでない男の俺でもあの筋肉はすごいと思うのだから、なまえからすれば相当だろう。俺は、静かにライナーに同情の目を向ける。彼女が次に何をするような人物か、俺は知り尽くしてしまっていたからだ。


「ライナー、腕触らしてー」
「………はあ、?」
「いいじゃん、ちょっとだけ」


返事も待たずにぺたりと手を付ける。小さく上ずった声を発するライナーは完全に固まってしまい、真っ赤な顔を全身ごとぶるぶる震わせながら、なまえの侵略に耐え忍んでいた。ほーとか、すげえとか言うなまえの声は、空いた手で両目を多いながら口だけ勘弁してくれ…と動かしたライナーには聞こえていないようだった。パンを食べ終えたサシャがおにぎりを買いに購買まで行くと言う。丁度いい、面白そうだから俺もジュースかなんか買いに行って、こいつら二人きりにさせてみよ。




20130801 俺ってば、出血大サービスジャンッ↑↑










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