ライナーとお風呂に入る



※微裏注意です


















「………なまえ」


お湯を浴槽に溜める音が近くから響く空間に、一つ単語が零れた。名前を呼ばれて、ベッドを背もたれに雑誌を読んでいたなまえはんん?と気の抜けた返事をしながら振り返る。家主であり彼女をお泊まりに誘った彼氏でもあるライナーは、少しばかり緊張した面持ちで彼女を見た。


「………一緒に風呂入らないか?」
「風呂…銭湯?今から行くの?」
「違う。そこの、風呂。俺の部屋の」


ライナーが立ち上がってお湯を止めに行く。戻ってきた時言葉の意味をようやく理解したらしく、なまえの顔がぶわっと赤くなった。


「えと、ええ、お風呂一緒?い、いっえ、な、なん?なんで?」
「いや、特に理由とかは無くて、なんとなく、と言うか…確かに、下心が無いとは…言い切れないが、純粋に入りたいな、と」


ライナーの顔もだんだん紅色に染まってきた。嫌がられたら素直に引き下がろうと思ったところでなまえが口を開く。


「えー、えと、うん、じ、じゃあ入ろっか、お風呂…」
「!いいのか」
「う、うん…私どうしたらいい?先に、洗っとく?」
「ああ、なまえ、先に身体洗っておいてくれ。俺も後で…入る」
「分かった」


着替えを持ってなまえが脱衣所の扉を閉めた。すぐシャワーの音が鳴って、これが終わったら自分も入ろうと彼も着替えの準備をする。
ざあざあなる音になまえを感じながら、赤面して雑誌を捲る。裸を見たいとか触りたいとか、それが理由の全てなわけじゃなかった。ただ…好きだから、一緒に過ごしたい。その気持ちをなまえも理解したから了承してくれたんだろうか、なんて思考する。


「なまえ?もういいか?」
「ん。ど、どうぞ」


音が止んだので、タオルを腰に巻き入浴の準備をした。扉を開けると、体育座りで少しでも小さくなろうとして浴槽に浸かるなまえの姿があった。一瞬だけライナーと目が合って、恥ずかしさからかすぐに逸らしてしまう。

それからしばらくはライナーが身体を洗うシャワーの音だけが鳴っていた。頭のシャンプーも洗い流して、緊張しながらなまえのいる浴槽へと身体を向ける。


「入って、いいか」
「………ん」


少し熱いくらいに感じるお湯に身体を浸す。なまえが恥ずかしそうに瞳を揺らして、正面のライナーから視線を外そうとしていた。


「ふー…お湯に浸かるのは、やっぱり気持ちいいな」
「そだね…」

「…なまえ」


ライナーの大きな手が、がっちり膝を抱え込むなまえの腕にそっと触れる。びっくりして顔を上げると、優しく微笑むライナーと目が合った。


「こっち来いよ」


優しい手つきで寄せられて、拒むこともできずにその腕の中になまえが収まる。身体を回転させてライナーに背を向けると、ぎゅっと抱きしめられた。彼女の心臓の音が風呂場に響くんじゃないかというくらい激しく脈打つ。


「………なんか、恥ずかし、い」
「…俺も」


ライナーがふっと笑った。自分より幾分も小さな身体を大事に大事に抱えて、そっと唇を寄せる。うなじを撫でて、耳の裏にちゅっと口付けた。そのままするすると首筋を滑って鎖骨にもキスを落とす。ペロリと一舐めするとなまえの身体が僅かに震えた。


「ん、なん?くすぐっ、たい、ひゃ」
「………なまえ、好き」


ライナーがなまえの首筋に緩く歯を立てる。また彼女の身体が揺れた。


「好きだ、なまえ」
「ん、私も…す、すき」
「大好きだ」
「…わ、たしも、ライナー」
「…愛してる」
「、ぁっ!」


ばしゃん、とお湯が跳ねる。ぬるぬると舌が這う感覚から逃れようとなまえが背中を折り曲げたからだ。ライナーもそれを追いかけて、今度は肩甲骨を齧ってから少しキツく吸い付いた。紅い痕。堪えきれずなまえの口から声が漏れる。


「ぁ、はぁ…ライナー、んん、」
「…なまえ」


再び抱きすくめられてゆっくり姿勢を正す。熱で浮いた頭を動かし横を向いたなまえの口の端に、ライナーがちゅっとキスをしてから耳元で息をついた。


「続き、しようぜ…ベッドで」
「!、ん…、ん」


そっと唇を合わせる。二人の唾液が混ざる音。ざばん、と身体が持ち上がって雫が湯船に垂れる。腰を逞しい腕に支えられ、それに体重を預けていたなまえはそっと彼の首に手を回した。お尻に手を回して、ライナーが抱きかかえて風呂場を後にする。髪と身体を拭きながらバードキスを繰り返し、今度は横抱きにしてベッドまで運んだ。ライナーが寝転がってその身体でなまえを支える。彼女の髪の先から雫が落ちてライナーの頬を流れていった。




20130708










人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -