看病される話の続き





どうやら自分はいつの間にか寝てしまっていたらしい。部屋の電気は真っ暗だし、カーテンの隙間からは暗闇が覗いている。
起き上がってみようと試みると、身体は怠いが大分回復しているようで、ゆっくり身体を起こすことができた。トイレにでも行こうと思って、足を床に降ろす。


「…んっ?」


何か柔らかいものが足の裏に当たる。自分がカーペットに置いた座布団じゃない。…何だこれは?


「………人?あ、ジャンか」


ジャンだった。腕を枕にして寝息を立てるジャンの腰を踏んだ感触だったのだ。もしかしたら自分が寝ている時に来てくれてたのかもしれない。
ふと思い出して当たりを見回すが、ジャン以外の姿は無い。夕方看病に来てくれた人はもう帰ったみたいだ。不思議と、少し残念だなあという気分になる。


「はあー…トイレトイレ」


思考を振り切ってトイレに向かう。リビングに戻ると、ちょうどジャンが起きて目をこすっているところだった。


「ん…なまえ、起きてたのか」
「ごめんジャン、起こした」
「いや、別にいいよ…もう大丈夫か?」
「熱はもう下がったみたい」


ジャンがホッとしたように笑う。向かい合って座ると、頭を長いこと撫でられる。


「ったくよー心配かけやがってこのやろー」
「あはは、ごめん、ありがとう。ジャンいつ来てたの?」
「えー…十時くらい?だったかな、平日で暇だったから一番にあがらせてもらってよ」
「そうなんだ。…なあジャン、ライナーは、まだその時いた?」
「ん、ああ。朝まで見るって言ってたんだが、なんか息荒くて危なかったんで帰した」
「え…もしかして移したかな、どしよう」
「いやーそういうわけじゃなくて…まあ、いいんだ大丈夫だ。気にするな」


詳しくライナーの様子を聞きたかったがジャンに適当なところで遮られる。どうも腑に落ちない…心配になったので明日の朝一番にメールを送ろうと決める。
時間を確認するためにケータイの画面を見ると一件メールが来ていることに気づいた。

『朝までいてやれなくてごめんな。お大事に。また、学校で』

本当に丁寧な人だと思う。簡素なメールに込められた彼の気持ちが嬉しくて、つい顔が綻ぶ。床が硬いからベッドを半分寄越せと勝手に上がってくる暴君に気づかれないようロックをかけて、何て返信しようか考えながら眠りについた。













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