日和 曽芭
※芭蕉さん亡くなってます
(曽良くん。俳句っていうのはね、世界を切り取って残していく事なんだよ。)
多くの弟子に囲まれ、芭蕉さんは眠りについた。
死に水をとった弟子達はとても汚い人間の塊。
どいつもこいつも芭蕉さんの事を真剣に思ってなんかいない。
自己満足、利害関係、金銭問題。
芭蕉さんは彼らをとても大切にしていたけれど、その彼らはとても汚い人間だ。
たぶん、僕も含めて。
皆が次々と墓前を離れる。
あんなに泣いていたくせに、全て終われば思い出すことも無いのだろう。
自分の不幸に酔って泣いているだけなのだから。
一人、亡骸の前に残った。
「…芭蕉さん……やっと、二人でゆっくり出来ますね。」
病んでしまい殆ど骨と皮だけの芭蕉さん。
一緒に旅したあの日々が嘘だったかのように、老いていってしまった。
(曽良くん)
芭蕉さん、
(きっと明日は)
どうして
(いいお天気になるよ。)
僕を置いて行くんですか
眦から静かに落ちる涙を、拭う手は喪われてしまった。
辛辣な言葉を吐いても、柔らかく受け止める笑顔は喪われてしまった。
芭蕉さん。
僕があなたの世界を見る事はまだ叶わないですが、いつかきっと見てみたいです。
だから、
あの人の切り取る「うつくしいせかい」を、見る為に僕は生きます。
***
芥川さんの「枯野抄」読んだ後の妄想。
友人と「曽良くん居ないね。」って話してたので、曽良君視点の枯野抄的な!
曽良くんはきっと自分の事を、他の弟子達とは別の意味で汚いって思ってると思います(`・ω・´)
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