日和 竹入

「…竹中さん?居ないのか?」

まだ若い彼は、私の悲しみになど気づきもしないのだろう。



いつも太子やイナフ、馬子が来ていた池の畔に来るのは、もうこの子しかいない。

「入鹿、また来たのか。」

「あぁ、美味しいお菓子が手に入ったから竹中さんに持ってきたんだ。」

私が水から出て声を掛けると、ふわりと微笑み桐の箱を見せてくる。

「焦がし饅頭ってやつ。あんま手に入らないんだぜ。」

竹中さん、食ったことねぇだろ?と、頬を桜色に染めるこの子は、私のことが好きなんだろう。

「…すまないな。ありがとう。」

「いや、俺が持ってきただけだし…ほら、食べろよ。」

ずいっと箱を押して、私に勧めてくる。
箱から一つとって、一口含む。甘い。
食べた事の無い味だが、確かに美味しい。

「美味いな…。」

「だろ!」

ポツリと感想を漏らすと、彼も饅頭を頬張りつつ楽しげに話してくる。

その後、話は様々な事(例えば仕事の愚痴やら将来の話だ。)を笑い混じりで話す。
私はそんな彼を微笑ましく見ている。

時折、何か言いたげな沈黙があるが、私は敢えて話す事によって沈黙を壊していく。



すまない、入鹿。
君の告白は聞きたく無いんだ。
君は俺が好きで、何度となくそれを伝えようとしてきた。
だが、私はそれを何度となく遮ってきた。


太子、イナフ、馬子   
私は彼らに取り残されて、
今、君の前にいる。

友人を失う悲しみを知った私に、君を得た後の恐怖は計り知れない。

君の告白を、きっと断れないから。






愛しているよ。無知な君を。




***
こんな竹入が読みたい。
竹入マイナー過ぎて無いんですよね…。
竹入スキーさんに捧ぐ!
いらないとは思いまs…げふんげふん


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