※死ねた注意
鬼道が死んだ。
「…びょう、き……?」
「あぁ」
全てを知ったのは少し前。
朝練の後の部活、まだ穏やかな春の日だった。
「末期でな、もう助からないそうだ」
人事みたいに言うから、嘘なのか本気なのか分からない。
いや、分かりたくないだけ。
「それなら、学校に来てる場合じゃないだろう。病院で、」
「動けなくなるのはもう少し先なんだ。それまでは普段通りで居たい」
だから、他のやつには言ってない。
そんな風に言われれば何も言えない。
鬼道が望むならとやかく言うべきではないし、叶えてやるのが筋だろう。
「音無は知ってるんだよな」
「いや、春奈も知らない。父さんと俺と、お前しか」
「なんで、音無に言わないんだ」
「泣かれたくないからな。最終的には泣いてくれるとは思うが」
鬼道と俺は同じだから、気持ちはわかる。
妹にはいつも笑っていて欲しい。
が、
「なら……なんで俺に言った」
「泣いて欲しかったんだ。
今みたいに」
ぼろぼろと零れ落ちる雫に、鬼道は微笑んだ。
Next→
back