硬質な円を描くフォルム。
濃い色に染まったレンズ。
青のバンドでとめられたそれを、鬼道が外す事は余り無い。
だから部室の机の上に置いてあったとき、とても驚いた。
(触っても……いいか………?)
前から気になっていた。
これをつけている鬼道の視界は、いったいどんな色に映っているのか。
サングラスをイメージすれば良いのかもしれないが、サングラス自体見近にないのだから知りようも無い。
持ち上げると意外に軽い。
フレームはプラスチック。金属製かと思っていたからびっくりしたが……ゴーグルに金属は重いな。
少し持ち上げてレンズを透かしてみれは、色彩を落とした景色が見える。
(これは、試合のとき困るんじゃないか?)
慣れているから平気なのかも知れないな。
こうしていると、鬼道の事をわかっていたつもりだったが未だにわからない事も多い事に気付く。
鬼道のゴーグルが意外に軽い事とか、フレームがプラスチックだとか、青いバンドは手触りが良い事とか、
(鬼道の視界の事、とか)
俺も色数落とした状態で見られていたのかもな。
俺は鬼道の程良い茶色の髪や透ける肌も、好きだったんだが……。
想いの差を見るようで少し悲しくなって、ゴーグルを机に置こうとしたとき、部室の扉が開いた。
素顔の鬼道だ。走ってきたのか、息が荒い。
「豪炎寺、ゴーグル、知らないか?」
息の荒さに引き摺られて途切れ途切れに言われた言葉に、俺は手に持っていたものを手渡す。
「ありがとう」
「あぁ」
息を整えてゴーグルをつけている鬼道。
やっぱり、そっちの方がしっくりくる。
「ゴーグルを忘れるなんて珍しいな」
「偶然、外してたんだ。視界があまり変わらないからしばらく気付かなくて、円堂に言われてやっと気づいた。」
視界が変わらない……?
「それ、暗く見えないのか?」
「外側からみると暗く見えるんだ。普通に着ければ裸眼と変わらない。マジックミラーみたいなモノだ」
「なるほど、な」
さっきの考えが杞憂に過ぎない事を知り密かにホッとしていたら、鬼道が意地の悪い顔で訊いてきた。
「着けたりしなかったのか?」
「は?」
「来た時に手に持っていたから、弄ったり着けたりして俺を想ってくれてたんじゃないかと思ったんだが。」
……9割、読まれている。
正直いって恥ずかしい。
思考の内なら幾らでも好きが言えるかもしれないが、口にするのは苦手なんだ。
それすら見透かされている気がして、恥ずかしい。
頬が火照るのを止められない。
「着けては、いない」
「そうか」
くくっ、と笑われればもう羞恥は限界点だ。
鬼道の横を通り過ぎようとしたら、腕を掴まれてそのまま抱き込まれた。
耳に吹き込まれる慣れた声にドキッとした。
「修也は可愛いな」
「そんな事言うのはお前だけだ」
「俺だけで良いんだよ」
あぁもうこの男は!!
よくわからないし俺ばかり振り回されてその上こいつの前だと自分すら制御出来なくなるんだがどうしてくれる!***
ゴーグルからの豪炎寺振り回されているらしいよ話←
結構迷走し、てますねかなり(´・ω・`)
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