※鬼→豪
※悲恋(?)


「結婚だってな、おめでとう。」

「ありがとう、鬼道。」

豪炎寺は今日、結婚する。




結婚式前の控え室で久方ぶりに会った豪炎寺は幸せそうに笑う。
相手の女性は柔らかく優しそうな、素敵な人だ。

祝福なんて、出来る訳が無いのだが。

中学生の頃からずっと好きだったんだ。
自覚したのは高校の時で、その頃にはもう気持ちを伝える勇気も後先を考えないような無鉄砲さもなかった。
そのままズルズルと引き摺って……俺は馬鹿だ。

「穏やかそうな人だな。夕香ちゃんも良く懐いていたみたいだし。」

「あぁ、二人は仲が良くてな。時々、俺を置いていくんだ。」

「その内旅行とかでも置いていかれるんじゃないか?」

「そうはならないように気をつけよう。」

平静を装って会話を続ける。が、いい加減限界だった。

「もうすぐ始まるな。良い式を期待している。」

「あぁ、後でな。」



控え室の扉を閉めた瞬間漏れる安堵の溜め息。
大丈夫だ。
俺は笑えていた。
いつも通りに。


このまま式、披露宴と乗り越えれば大丈夫だ。
滅多に会いやしないのだから、こんな気持ちになる事はなくなる。




俺は絶対に言わない。
この想いを伝えたいだなんて、思ったりなどしないから。


どうか、幸せに。



眦から零れ落ちそうな涙を無視して、俺は歩きだした。







***
気付いたら書いてます。式場のおはなし。
因みにこの豪炎寺は、鬼道さんのこと純粋に親友だと思ってます。
鬼道さんドンマイ!





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