あぁ……今夜ほど、俺の遺伝子を怨むことは無いんだろう。

「道也、眠れねぇ。」

俺は道也の部屋のドアを開いた。




道也はもう寝る所だったらしく、ベッドに寝そべっていた。
当たり前だ。もう時計はてっぺんをとっくに過ぎてる。
道也は身を起こした。

「不動、消灯の時間は過ぎているが。」

「寝れねぇんだよ。」

ここ数日、全く眠れなかった。

「…こちらへ来い。」

道也はなんだかんだで俺に甘い。
すんなりと寝台に入れてくれた。

「ちゃんと歯を磨いたか?」

「んなガキじゃねぇ。」

子供扱いされるのが、凄く嫌だ。
対等じゃ無い感じが。

「なぁ、道也。」



「俺、女だったら良かったのに。」



道也は目を見開いた。
俺は言ってしまったって気持ちでいっぱいになった。
ベッドに座っている道弥、その隣で寝っ転がっている俺。苦しくなった。

「あきお、おいで。」

誘われるままに身をよせると抱き締められた。
あったかい。みちやのあったかいにおい。

「どうしてそう思ったんだ。」

「俺が女なら、孕む事が出来たのに。」

「明王、それは……」

「…俺、道也に満たされてみたかった。腹んナカみちやでいっぱいになってみたかった。
なのに、俺には道也を受け入れる場所が無いんだぜ?」

自嘲する。
望むものは、手に入らないのだと。


「明王、俺も明王も男だ。」

「けど、俺は道也に孕まされたかった。」



唯、道也に満たされたかっただけなのに。

在るはずの無い俺の子宮が、望むモノで満たされることは永遠に無いのだ。

俺の染色体の気紛れを心の底から恨む。


23番目のアイロニー
「〜Xの欠落〜」






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