※沖縄・離脱中



土方に急かされ、風呂に入る為に腰を浮かした。
必殺技の練習に加え、沖縄は暑い。
汗でベトつく肌にイライラした。

着替えをもって洗面所へ行く。
服を脱いでいると、視界に自分の素肌が映る。

鬼道に付けられた跡も。

「………あ…」

薄く、なっている。

あの朝はあんなにも赤くなっていたのに。


首筋と腹部に数枚を薄く残したほの赤い花弁を薄くなぞる。

たりない。
全然たりない。

鬼道は案外独占欲が強いらしく、嫌がっても全身に真っ赤な跡を残す。
だから、こんなに跡の無い自分の肌を見るのは久しぶりで、酷く寂しくなった。
着替えの度に気を使わなくてはいけないから、止めてほしいと思っていた筈だったんだが……。

肩の歯形も腰の跡も消えて、鬼道の熱ももう思い出せない。


「……有人…。」


思わず零れた言葉に、身を震わせる。
名前を呼ぶのは夜だけだ。

たりないんだ。
有人が。

もう一度名を呼ぶと、鏡の向こうに赤い瞳が見えた気がした。




名残の花


    





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