講義も終わり、大学からまっすぐ鬼道の家に行った。
大学に入りたての頃は鬼道が料理できなくて、俺が鬼道の家に行く度に作ってやっていた。
だからいつも買い物してから行っていたんだが…二年やればある程度形になるんだろうな、あいつはもう自分で大体の料理を作れるようになっている。
手先が器用なんだと感心するが…料理に失敗する鬼道が見れなくなったのは残念だ…。
とりとめもない事を考えていれば、鬼道の暮らしている部屋につく。
高そうなマンションだ…俺も人の事言えないが。
インターフォンを押した。しかし、物音がしない…。
「鬼道、居ないのか?」
ならば仕方ない。
もらった合い鍵を使って部屋に入る。
シンプルな部屋だが、暖色系でまとめられていて人の温かみがある。
鬼道の部屋と言うとモノトーンで質素な部屋を想像していたから、初めて来た時には驚いた。
やる事も無かったから、リビングの机を借りて課題をやっていたら、いつの間にか眠ってしまった。
…甘い、匂いがする……。
暖かい何かに包まれている。
心地好くてすり寄れば、包まれる圧力が増した。
ふと目蓋を開けると、鬼道の赤い瞳が見える。
「……きどう…?」
「起きたか?」
声が近い。
顔も近い。
甘い匂い。
……まさか、抱き込まれているのか…?
わたわたと身を起こそうとすると、毛布の上から抱かれていたようで抜け出せない。
鬼道の寝台のようだ。
「良く寝ていたな。そんなに疲れてたのか?」
「い…いや、そうでもない。」
「そうか?医学部は忙しそうだからな…。」
「大事な学会が終わった後だから少し暇になったんだ。離してくれ。」
鬼道が寝台から起き上がる。
それに倣って、俺も這い出た。
「寝てしまって悪かったな…しかも寝台まで運ばせたろう。」
「気にするな。それより、リビングで待っててくれ。ビン持ってくる。」
「わかった。」
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