夕香が幼い頃、俺に言った言葉を思い出す。

お兄ちゃんお兄ちゃん、うさぎさんのおめめが真っ赤なのはね、いっぱい泣いちゃったからなんだよ。うさぎさんは淋しいとね、泣きすぎて溶けちゃうんだよ。だからね、溶け残ったおめめが真っ赤だと、「わたしはここに居たんだよ」ってわかるでしょう?だからうさぎさんのおめめは真っ赤なんだよ。



一ヶ月に一回程だろうか、鬼道は関を切ったかのように一日中泣き叫ぶのだ。

泣いて泣いて、名前を呼んでくれと、
俺に縋りついて懇願するのだ。

さながら幼子。
親という庇護者をもとめているような、幼子。

「ゆうと、ゆうと。」

名を呼べば、しがみつく腕の力が増す。

「うぁ…ああああ!…っ…ぐすっ…ひぐぅぅ…ぁぁぁぁぁぁ……っ!」

辛そうに泣くから、こちらまで辛くなって、俺も一緒に泣くんだ。息を殺して。

「ひぅ……うぁっ…うぅぅ〜〜っ…ああぁぁあぁぁぁ!……ぐずっ…。」

「…っ…ぅ……。」


この時には、絶対に名字を呼んではいけない。
鬼道の有人ではなく、ただの有人として俺を頼っているらしい…から。
有人は、きっと時々解らなくなるんだろう。
自分が一体誰なのか。何のためにここにいるのか。
この間言っていた。


『何もかも棄てたくなるんだ。全部棄てて、何処かに行きたくなる。

しがらみだ。全部。』



遠い目をした鬼道はそう、確かに言ったのだ。
見つめたのは仄暗い過去か、灰色の未来か。



『皆、大切だ。大切だから切り捨てたくなる。

無邪気に慕ってくる妹も期待をかけてくれる養父も、司令塔として頼ってくる仲間達も元チームメイト達も、重い。
俺が大切に思いすぎて勝手に重くしてるんだ。

ごめん。
ごめんなさい。

あんなに俺に優しいのに煩わしく思うなんて、それは罪だ。』



申し訳無さそうに呟いた。

『鬼道有人』という存在は、有人に負担を強いるのだろう。
こうやって泣く事で『鬼道有人』を保とうとする。

そんな彼に俺は言うのだ。

「俺は、鬼道じゃなくて有人が好きだ。」



人にあまり弱みを見せたがらない有人が俺の前で泣くのは、有人のしがらみの中に俺は入らないという事なんだろう。
彼の世界は、彼と俺と『大切な人々』で構成されている。
それに気付いた時の俺は、『大切な人々』よりも彼に親しいことに喜びで泣くかと思った。


 
 


  




(彼はは赤いおめめのうさぎさん。)




***

鬼道さんはみんな大好きだよ!
けと『鬼道』有人である事を求められてるんだと思ってしまう事もあるんではないかと。影山のせいです多分。
鬼道さんは鬼道さんである前は、別の有人だった訳で、鬼道家に来る前は完全を求められるような立場じゃなかった訳で。
イナイレはキャラみんな辛い過去を持ってますけど、鬼道は結構上位に入ると。正直豪炎寺は中一までそれなりに幸せ(?)だったから…なぁ…と思ったり思わなかったり。


豪炎寺に依存鬼道×微病み豪炎寺…になってるような…?
てか読んだ感じだと豪鬼っぽい…あれ…?
\鬼豪です/
(`・ω・´)





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