今日もサッカー部には練習がある。
雷門中の練習にはハリがあって、俺は好きだ。
円堂のやる気につられて皆やる気が出るんだろう。総受けの宿命だな。
サッカーと言えど、ただボールを蹴るだけのスポーツじゃない。
むしろ重要なのはボールを持たない時の動きであったり、声であったり。
司令塔である俺やキーパーである円堂は特にそうだ。
必殺技も大事だがな。
これから円堂が新しい必殺技の練習をするらしい。
豪炎寺と染岡、そして俺にシュートを頼んできた。
「よし、来い!」
『ドラゴンクラッシュ!』
「まだまだ!」
『ファイアトルネード!』
「よっしゃあ!」
『ドラゴントルネード!』
…あの二人は案外、容赦ない。
さっきから二人のボールは円堂の腹やら腕やら顔面やらに当たり、ボコボコだ。
よくあることなんだが…やりすぎは、良くない。
「二人とも、待て!」
キーパーに多い怪我は突き指だ。
円堂は自分の怪我を無視するからな…どんなに突き指が痛かろうが練習しようとする。
そんな練習は実にならない。
そんな所に萌えるがな!
二人を止め、円堂の右のキーパーグローブを脱がすと腫れあがった指が出てきた。
「円堂、突き指したなら言え。」
「これくらい、なんともないって!」
「……はぁ…。」
溜め息をひとつ落として、マネージャーの所まで引きずっていく。
円堂を春奈に引き渡した。
「今日はもう、キーパー練習はなしだ。」
「大丈夫だって!まだやれるぜ!」
「お前な…無茶すると手を壊すぞ。」
幸いにも次の試合までには時間がある。ゆっくり治すのも大切だ。
「とにかく、キーパー練習はなしだ。他にも練習すべき事はあるだろう?」
「…わかった。他の練習ならやっても良いんだよな!」
流石に円堂。ポジティブシンキングだな…。
FW組に近寄り、円堂が突き指したと説明した。
「しっかし…良く気づいたな。たいしたモンだぜ。」
染岡の美点は、こういう素直なところだと思う。
わかりにくいが。
「選手を良く見るのも司令塔の役目だ。」
「バカ、褒めてんだから素直に受け取ればいいだろうが。」
「それはすまないな。」
豪炎寺は無言のまま、こちらを見ていた。
「…豪炎寺、どうかしたのか?」
円堂が心配なのか!?怪我させた事が辛いのか!?!?
……そうだとしても普通に心配してるんだろうが…。
「いや、なんでもない。」
そう言って二人は練習に戻っていった。
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