※「air」後日



「今度は鬼道が歌ってくれ。」

楽しげに歪められた口元に、豪炎寺の本気を見た。



豪炎寺に歌ってもらった数日後の事だ。
その日は学校で、丁度時間があったから裏庭で一緒に昼食を取りつつ、次の試合相手について話し合っていた。
豪炎寺が眠そうだったから、少し寝ろと言うと歌ってくれと……。

まさか、返ってくるとは思わなかった。




「なんで今なんだ…?」

あのとき請うたのは自分だ。
だから拒否は出来ないが、ここは学校。
誰かに見られたら痛々しい。

「駄目なのか?」

「駄目じゃない、だが…。」

「寝るのを勧めたのは鬼道じゃないか。」

「今日の豪炎寺は意地が悪いな。」

茶化して言うと、いつも心乱されるのは俺なんだから、今日は仕返しだと言われた。
お前も充分、俺を乱している事に何故気付かないのか。
子守唄を請うたのも、誰かを抱き締めて寝るのも生まれて初めての経験。
あんなに心地好いものだとは知らなかった。

豪炎寺を見ると、何時もは浮かべないような綻んだ顔をしていた。
俺だけが見れる、恋人としての貌。

……仕方ない、か…。


「膝枕もつけてやろうか?」

豪炎寺はキョトンとして、花が綻ぶように笑った。

「頼む。」

「ほら、おいで。」

手招くと近付いて、

「……なんか照れるな…。」

ころんと横になった。
勿論、頭は俺の膝の上だ。
素直な重みが心地好い。これが、豪炎寺の重みか…。
次は膝の上に乗せてやろうと思いつつ、頭を下げて顔を近付けて俺は囁いた。

「良い子で寝ろよ?修也。」

豪炎寺は一気に顔を朱に染め上げた。
そんな彼の顔の上に軽く手を乗せて視界を閉じる。

初めての子守歌を、一番愛しい君に歌う。


それは、一種祈りのように   …。





***
豪炎寺は妹と歳が離れてるから、きっと子守歌歌ってたんだろうなと。
鬼道さんは妹とあんまり歳が離れてないから、歌ったこと無いんじゃないかなと。

雷門中の構造についてはきちんと考えてません(`・ω・´)





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