「子守唄を、歌ってくれないか?」

柔らかな声で密やかに囁かれた言葉は、耳に溶けるように響いた。





鬼道の両親が居ないと言うから、豪炎寺は鬼道の家に泊まりにきていた。
二人で夕食を取り、風呂に入って。
お互いの髪を拭いたり、ソファで軽くじゃれ合ったり。

そろそろ寝ようとベッドに潜り込んだ時に、子守唄を請われた。




「子守、唄…?」

「そうだ。」

「どうしたんだ、急に。」

子守唄か…妹に歌ってやっていた頃から久しく歌ってない。
今までの会話に子守唄に関係するような内容も無かった。突然過ぎる。

「急って訳でもない。豪炎寺は落ち着く声をしているから、子守唄を歌ってくれたら良く眠れそうだと前から思っていたんだ。」

「そうか…?」

落ち着く声だなんて初めて言われた。
そう返すと、

「少なくとも、俺は落ち着く。」

と言われて、頬を撫でられた。

寝る直前でゴーグルは取っている。
鬼道の整った顔がこちらを見つめて、視線は甘えを含んだ優しいもので。
正直、ときめいた。


「…期待はするなよ?」

甘い眼差しに耐えきれず、目を逸らしつつ呟く。
きちんと聞こえたのだろう、きゅっと抱き締められて、ありがとうと礼を言われた。

そんな大層なものでは無いのだが…。
普段はしっかりとしていて余り心を乱すような事のない恋人に甘えられれば、それはそれは嬉しいものだ。

基礎体温が自分より少し低いのだろうか、指先が冷えている鬼道の手に自分の手を重ね、緩やかに歌い出した。



鼓膜を震わせる暖かな声は、夜気に反響して解けてゆく。







***
豪炎寺に歌わせ隊!
と思って書いたんですが、最終的に目指したのは甘えた鬼道さんだったり(`・ω・´)←






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