第3話

政宗宅



お菓子は、各自持ち寄る予定だったのだが、幸ちゃんがお菓子作りが出来ないということで、私と政宗と幸ちゃんは、一緒にクッキーを作ることになった。

「じゃあ、まずは材料を揃えようか!幸ちゃん、小麦粉を取ってくれる?」

「承知したでござる。」

そう言い、幸ちゃんが持って来ようとすると、

「あっ…。」

小麦粉の袋が宙を舞い…

バサッ

床に落ちる。

白い煙が辺りを包み、床に白い山ができた。

「何やってんだ!真田幸村!!」

「もっ、申し訳ないでござる!」

「まあ、しょうがないよ。」

そう言いながら、片付け、別の新しい小麦粉を用意した。

溶かしたバターなどを混ぜる仕事は、大変で政宗が混ぜて、私はボールをおさえる。

その間に、幸ちゃんには、卵を割っていてもらうことにした。

キッチンにハンドミキサーの音が響く。

「毛利達が何を作って来るのか楽しみだぜ。」

「元就は、オクラ関連の何かじゃない?」

などと、他愛もない話をしながら、楽しく平和に、そして何より順調に進んでいた。

少なくとも、私と政宗は…。

グシャ。

「…ねえ。なんか、変な音したよね…。」

そう言い、幸ちゃんの方を向くと、辺りに飛び散った卵と卵でべちょべちょになった幸ちゃんの手が視界にとまる。

「…幸ちゃん?」

「もっ申し訳ないでござる!」

「…うん。あとは、私達がやるから、幸ちゃんはできるのを待ってて。」

そんなこんなで、あとは幸ちゃん抜きで作り、生地をオーブンに入れるまで、いつもの2倍くらい時間がかかってしまった。



オーブンから出すとふんわりとした甘い匂いが鼻をくすぐる。

「いい感じに出来たみたいじゃねえか。」

「そうだね。」

私は、みんなで試食するべく、幸ちゃんを呼んだ。

「幸ちゃん、来てー!」

「…なんでござろうか。」

しょんぼりとした幸村が重々しい足取りでキッチンに顔を出した。

まだ、失敗したことに落ち込んでいるらしい。

「クッキーできたよ。試食しよう?」

すると、幸村はパッと顔を輝かせた。

「真でござるか!?」

お菓子で、テンションが回復するところが幸ちゃんらしいところでもあり、長所とも言える。

「パクッ…。」

幸ちゃんの機嫌をなおしたはいいが、幸ちゃんはお菓子好きということで、お菓子にはかなり五月蝿い 。

この間も、新製品を片手に文句を呟いていた。

所謂、辛口な美菓子家なのである。

「…どうかな?ちゃんと出来てる?」

私は不安と期待に胸を膨らませた。

「…うむ。美味でござるよ!」

私の強張っていた肩の緊張が解れるのが、すごく分かった。

「…良かったあ…。」

「そうだな。」

私と政宗は手を取り合って喜んだ。

「あの…。」

歓喜している最中に、幸ちゃんが声をかけてきた。

「時間…大丈夫でござるか?」

時計に目線を向けると、家を出る時間をだいぶ過ぎている。

「えっ…えぇぇぇー!???」

私達は、急いで支度をし、慌ただしく家を後にした。

ゆとりを持てるように早くから準備したのだが、いつもより時間がかかったせいで、急ぐはめになってしまった。


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