第2話

暫くすると、廊下から男の人の足音が近づいてくるのが聞こえた。

それは、島津の者とは、また違う者の音。

「わざわざ寄らなくてよろしいのに…。」

この足音。

嫌でも誰か分かる。

きっと、私の大嫌いな長曾我部元親だ。

私は、彼が来ないように必死で祈った。

足音が私の部屋の前で止まる。

と同時に、襖が勢い良く開く音がした。

「よう!紗夜!遊びに来たぜ。」

やはり来た。

私は、密かに溜め息を吐く。

相も変わらず、繊細な神経を持ち合わせていない方だ。

普通他人の部屋に入るときは、最初に声をかけるのが常識だろう。

それに、女性の部屋に入るのに声もかけず、
襖を思い切り開けて入って来るなんて失礼極まりない行為だ。

「…何の用ですか。」

私がムスッとしながら聞くと、彼は入って来た時と同じ笑顔で、

「この間野郎共と船で旅をしていたら、いいお宝を見つけてな。
紗夜のために買ってきたんだ。」

と言い、何やら棒状のものを渡してきた。

それは細やかな細工が施してある髪飾りだった。

「…。」

「どうだ?綺麗だろ。」

コクン。

私は頷き、暫く髪飾りに目を奪われていた。

「そんなに気に入ってもらえて良かったぜ。またな。紗夜。」

そう言うと、彼は部屋を出て行った。

また、暫くその髪飾りを見ていると、ある事に気付いた。

彼にお礼を言ってない。

お礼を言わなければ!

彼はどこにいるだろう。

私は、城中を探しまわった。

女中にも、父様にも聞いてみた。

しかし、彼の姿はどこにも見当たらなかった。

得られたものといえば、疲労だけ。

なら、まだ港にいらっしゃるかもしれない。

私は疲れている体に鞭を打ち、急いで港に向かった。

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