「ちょっとかくまってくれ!」

勢いよく開いたドアと共に、黒髪黒目の長身の男ライナ・リュートが駆け込んできた

かなり焦っている様子である

「どうかしたんですか?」

シオンさんはいませんよ?と彼に任せられた仕事をしながら、アネモネはそう言った

「いやシオンいなくてむしろ好都合なんだけど…じゃなくて…説明するのは面倒だから省くけど、誰が来ても俺がそこの部屋に隠れてるって言わないでほしいんだ」

ライナは隣の仮眠室のドアへと手を伸ばした

「そう言って…まさか寝るためだけにきたとか言いませんよね?」

「ま、まさか…ついでに寝るだけだってん」

「うーん…」

「とにかく、よろしくな」

彼はそう言ってさっさと引っ込んでしまった

直後、ライナが最初にやってきたドアから誰かが入ってくる

「ライナいるかい?」

それはライナによく似ている若い男性であった

眠たそうな目がそっくりである

そんな彼はきょろきょろと部屋の中を見渡した

「おかしいな…確かにここに逃げ込んだような気がしたんだけど…」

「あの…?」

「ああごめん、つい…
君は、例の子かな?」

アネモネが驚いたように見つめていると、男性もアネモネをじっと見つめた

どうも会う人会う人に同じ反応をされる気がする

そんなに自分が拾われたことが珍しいのだろうか?

「君、ライナ知らないかい?」

「えっと」

「僕はリューラ・リュートルー、ライナの父だよ」

「ライナさんの、お父さん?」

アネモネはちょっと疑り深そうにリューラを見た

どう見てもライナのような息子がいる感じではないのだ

「よく言われるよ、若いってさ」

「あ…ご、ごめんなさい」

「いいんだよ、気にしなくても」

アネモネは申し訳なさそうに身を縮めた

リューラは笑って流してくれたが、どうにも落ち着かなくて

「ライナさんを探してるんですか?」

「そうそう、ライナをね、久々に親子水入らずで食事しようよって言ったら逃げられちゃった」

「隣で寝てますよ?」

「ありがとう!」

後ろめたさなのか、思わず、ライナに口止めされたことを忘れて彼の居場所を教えてしまった

いや黙っていてもいずればれたのだろうが…

「アネモネ裏切ったなああああ!?」

「ライナそんな風に叫んじゃダメだよ?」

「そんなに寄るなって!近い、近いってば!?」

アネモネがライナの場所を口にした瞬間には、リューラは隣の仮眠室へと飛び込んでいた

今は何だかもめているようだが、ライナの声は迷惑そうというよりもむしろ嬉しそうな感じで

「よかったよかった?」

アネモネはそう言って、再び書類へと目を落としたのだった

家族っていいな、なんてちょっと思いながら

結局、ライナが二人が嫌だと押し切ったのか、この後彼女も食事に参加したらしい




パパはパパ
息子は苦労しているようだ







[戻る]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -