ドアを開けて誰かが部屋へやってきた

「シオンさん」

「誰かと思えば…アネモネじゃないか、どうした?」

「あの…いつもありがとうございます!」

「おいおい…また急にどうしたんだ?」

シオンは仕事をしていた手を止め、そう胃って顔を上げた

目の前には女性が立っている

年は自分と同じくらいだろうか、深い緑色をした長い髪をピンクのリボンで括っている

顔はまだ少し幼さを残しているが、くりくりとした赤い瞳がなんとも愛らしい

そんな彼女はついこの間からここ、ローランド城へ住ませてもらっている

先日、中央大陸にある砂漠の真ん中で倒れていたのを、シオンに助けられたのだ

だから、彼女は彼にいたく感謝しているのだが

シオンとしては、あまりにも頻繁にお礼を言われるのでちょっと複雑である

「なぁアネモネ、俺はお前に何もしていないよ」

「そ、そんなこと…」

「だって俺が助けたくて助けたんだ、感謝されなくても当然のことをしただけだよ」

シオンがアネモネにそう言うと、彼女は何となく悲しそうな顔をする

本人としては感謝してもしきれない音を感じているようだ

だって助けてもらわなかったら、死んでいたかもしれないのだ

と、いいつつも彼女は眠るように倒れていた

なぜあそこにいたのかは、わからない

けれど、シオンとしては放って置けなかったから

だから、連れ帰ってきて、今にいたるわけで

「…わかったよ、そんな目で見るなって」

じっと見つめられると、どうも背中がかゆくなる

シオンは仕方ないなぁという風にペンを置き、立ち上がった

「よし…一緒に外にでも行こうか」

そしてそう一言

するとアネモネはみるみる表情が明るくなる

見ていて飽きないなぁとシオンは思う

「俺は悪い子だからね、穴場いっぱい知ってるよ
どうせならライナ達も呼び出して皆でゆっくりしようか
…もう戦争もないしな」

そして、そんなアネモネを見ていると、彼は彼女の喜ぶ姿がもっと見たくなるのだ

ふわりと笑う

輝くような、その笑顔を

「じゃ、支度してきたらいいよ」

「はい!」

シオンはぽんとアネモネの頭を軽く叩いた

彼女はくすぐったそうに目を閉じる

そして出かける準備をしに部屋を出ていった

「まぁたまにはこんな日も悪くはないのかもな…」

と、彼はアネモネの足音が遠くに消えるのを待って、そんなことを言ったのであった




仕事の合間に
たまにゆっくりしてみる?







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