小手毬学園

そこには魔法や特殊な力を持った者達が通っている

この学園がある世界で、人々は仲良く暮らしていた

この学園に通う一人、ライナ・リュートは自分の机で大きな欠伸をした

「もう三時間目なのに、まだ眠たいの?」

それを見ながら、隣の席に座っている赤髪の少女、キファ・ノールズは呆れたようにライナへ話し掛けた

「朝から煩くて寝れなかったんだよ…」

ライナはキファにそう言いながら机へ突っ伏す

「リューラさん?」

「そう、父さんが、起きなきゃちゅーしちゃうぞ!とか言いながら勝手に部屋に入ってきたわけよ」

参っちゃうよな、とライナは言って

でもキファはそのライナの発言に顔を赤めながら

「ち、ちゅー?それって…き、キスだよね…」

なんて言って頬に両手を当てている

実は彼女、ライナの事が好きなのだ

クラス…いや、学校でも有名な話である

だが当人であるライナは彼女の気持ちには全く気が付かず、だらだらと毎日を過ごしていた

「しかし、相変わらずの仲良し家族だなぁ」

二人がいつものように会話をしていれば、横から声がかかる

「あ、シオンおはよ」

「おはようキファ」

銀髪に金目、彼の名前はシオン・アスタール

彼はライナの親友、もとい悪友であった

「親父さん、相変わらずライナが大好きなんだな」

「嬉しいことだけど、それはそれで疲れるんだって」

「はは、万更でもないくせに
そういえばライナは週末の体育祭の話、両親に話した?」

シオンがそう言うと、体育祭〜?とライナは顔をあげた

彼は相変わらず爽やかな笑顔でライナを見つめている

「ライナ、その話の時寝てたんじゃなかった?」

「あぁそうか…じゃあ俺とお前が二年のリレーアンカーってのも知らない?」

「アンカー?ちょっと待て、俺走るわけ?」

ライナが面倒臭そうに言った

事実、彼は大変面倒臭がりなので走ること自体も嫌いである

「だけどライナ、面倒だなんて言ってられないと思うよ?だってお前と同じ組には…」

シオンがやれやれ、と何か言い掛けると、それは途中で止められる

何故なら彼女がやってきたから

「ライナ、貴様…聞いたぞ?父親にちゅーされたそうだな」

「されてねぇよ!」

「ふむ、ではお前がしたんだったか?」

「誰が自分の父親にキスなんかするか!」

そんなことを言いながらやってきたのは、彼の家の真向いに住む幼なじみ、フェリス・エリス

どうやらシオンが言いたかったのは彼女のことのようだった

「で、何…?つまりお前と俺が同じ組で?」

「俺とキファはライナの敵ね」

「ライナ、リレーで負けたら私の竹刀が唸るぞ?」

フェリスは背中に背負っていた竹刀に手を掛けた

彼女の家は両親が道場を開いている、つまりは師範

彼女のその両親に鍛え上げられた剣道の腕は一流で、太刀筋は目に見えないほど鋭い

「うぇ、それは勘弁」

なのでそれを食らうのは嫌だとライナは両手を挙げ、降参のポーズをした

するとフェリスは

「だったらシオンに負けずに走ることだな、勝ったら私が特別にだんごを奢ってやろう」

そんなことを言うものだから三人は驚いて

「マジ?お前、すげー珍しいこと言ったぞ」

「雨が降るんじゃない?」

「フェリスさん太っ腹〜」

口々に思ったことを言ったりして

そして、それが何だか無性に腹が立ったので、フェリスはとりあえずライナを殴っておいた

「ぎゃあぁぁぁ!急に何すんだよ!」

「よし」

「うぅ………理不尽だ…」

フェリスの竹刀を避ける間もなくもろにくらったライナは、そう言いながら机の上に倒れたのだった





体育祭の前日、ライナがゆっくり湯槽に浸かっていると、いきなり浴室のドアが開いた

「ライナ!一緒にお風呂入ろう!」

入ってきたのは彼の父親、リューラ・リュートルー

ライナと違い髪色は金だが、その目元はそっくりで、彼と同じく眠たそうである

そんなリューラはタオル一枚を羽織り、いきなりライナのところへと押し掛けてきたのであった

「父さん…一体何してんだよ…」

ライナはいきなりのことに驚きつつも、そう返す

「うん、息子の成長した姿が急に見たくなってね」

するとリューラはそう言いながら浴室の中へ入ってくるではないか

それを見てライナは慌てて

「俺いくつだと思ってんの?もう一緒に風呂入る年じゃないんだって」

そう言って阻止しようとするが、笑顔で返されて

「そんなこと言わずにさ、僕と背中の流しあいっことかしようよ」

おまけにこんなことを言うもんだから

「うぜぇぇぇぇ!?」

ライナは思わず頭を抱えてしまう

でも実は結構嬉しかったりして

言葉には出さないが、ライナは背中の流しあいっこをすることにしたのだった

「僕はいつも大学の方で忙しいから、たまには、さ」

「こんなことばかりしてると、母さん怒るぞ?」

「うーん…それは嫌だなぁ…イルナの怒った顔は見たくないな
でもそんな彼女も可愛いんだけどね」

ごしごしと背中をこすりあいながら、そんな会話をする

父親とたまに風呂に入るのも悪くないかもしれない、とちょっとライナは思った

なぜならいつも話せないことが話せるから

父子だけで話したいことだってあったりするから

普段忙しい両親と触れ合える機会があるのは、いいことかもしれない

リューラは大学の講師だ

話によれば彼は魔法の構成や使い方について教えている

ライナも昔からリューラの話を聞きながら育ったので、ほとんどの魔法は使うことができたりする

イルナはライナの母親で、リューラと同じ大学で魔法の研究をしていた

彼女達は今の大学で出会い、恋愛結婚をしたのだという

だがこれを聞くと、リューラが惚気に惚気るのでライナはあえて聞かないことにしていた

「あ〜そういや、明日なんだけど」

「明日?」

えぇと、とライナはそこで言葉につまる

「もしかして仕事?」

「一応、大学には呼ばれてるかな」

そっか、とライナは言った

「なら、いいや、ごめん、今のなし」

仕事なら仕方ない、体育祭の件を話すべきかと思ったがライナはやめておいた

邪魔はしたくなかった、仕事に集中してほしかったから

「そう?」

リューラは不思議そうに首を傾げたがそれ以上は聞かなかった

本番は明日である




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