「起きろライナぁぁぁ!」
部屋に声が響いた
聞き慣れた声だ
直後、自分の枕元に何かが直撃する
「うっわ、危ねぇ!?」
寸ででそれを避けるも、少し髪の先が斬られてしまった
全身に眠そうなオーラをまとった黒髪長身の男、ライナ・リュートは思わず頭を押さえた
見上げれば、絶世の美女と呼ぶにも相応しい女性
艶やかな金色の髪を揺らし、青い瞳に白い肌
彼女の名前はフェリス・エリス
ライナの旅の相棒である
「おま、お前……剣…!?」
「ふむ…惜しかったな」
「何だよその残念そうな反応!?」
彼女は無類のだんご好きである
ことあるごとにそれを頬張っているのだ
現在、フェリスはだんごを片手で口に運びながら、自分の持っている大きな剣をライナへと振り下ろしていた
実はこのようなことは彼らの間では日常茶飯事である
だからライナも彼女がおふざけで振り下ろす剣なんて、避けられるのだが
「ったくいつも容赦ねぇなぁ…で?」
「だんごを買い占めに行くぞ!」
やっぱり、とライナは思った
大体、彼女が自分を叩き起こしにくる理由はそれくらいしかないのだ
でも結構まんざらではなかったりする
構ってもらえて嬉しかったりする
だから、仕方ないなぁと言う感じで彼は立ち上がった
*
さて、場所は少し移ってウィニットだんご店
ここはフェリスお気に入りの店である
因みに…ライナと共に旅に出たのも、この店が壊されないためであったりする
フェリスは「新商品」と書かれたものを全て買い占め
さらには他のだんごまで買い占めた
しかもライナの金で
いつもこうなのだ、いつの間にか彼のお金はだんごへと消えていくのだ
だから、ライナは思った
いや、もう言ってやる!と
そして半ばやけくそに叫ぶ
「あぁ、もう!?いつも、だんごだんごだんごだんご!?
お前は俺とだんごとどっちが大事なんだよ!」
ライナは一気にまくしたてた
と言っても、結果は変わらないのだ
とりあえず言ってみただけなのだ
だが、フェリスは
「勿論、お前に決まっているだろう?」
と言って頬を染めたではないか
「は!?え……あ…あう…」
ライナとしては思ってもみない反応だったようだ
照れたような困ったような顔をしている
だが、そのすぐ後にフェリスに殴られた
「ぎゃあぁぁぁ!?って何すんだよ!?」
「……………ふん」
ライナは慌てて起き上がり文句を言う
が、フェリスはそれに反応せず、背を向けてどこかに行ってしまった
ライナはぽかんとしたまま、その場に取り残されたのだった
*
「…と、いう話を考えたんだけどどうかな?」
とある一室、銀髪金目のシオン・アスタールはライナとフェリスに楽しそうに自分が考えた話をしていた
「何でこうなるんだ!」
「おかしいぞ」
と、二人は文句ばかり
だが
「何言ってるんだ?フェリスはホントにライナのこ…」
「……っ!」
シオンが何か言い掛けると、フェリスはすぐさま剣で彼を叩いた
ライナが頑張ってやっと避けられる程度なのだ
シオンはあっさりと剣に直撃し、昏倒した
「…行くぞライナ」
「え?あ〜…うん」
ライナはその太刀筋に恐怖を覚えながらも、つかつかと歩いていく彼女についていったのであった
だんごよりも大切なもの本人の前でなんて、言えない
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