「起きろライナぁぁぁ!」

部屋に声が響いた

聞き慣れた声だ

直後、自分の枕元に何かが直撃する

「うっわ、危ねぇ!?」

寸ででそれを避けるも、少し髪の先が斬られてしまった

全身に眠そうなオーラをまとった黒髪長身の男、ライナ・リュートは思わず頭を押さえた

見上げれば、絶世の美女と呼ぶにも相応しい女性

艶やかな金色の髪を揺らし、青い瞳に白い肌

彼女の名前はフェリス・エリス

ライナの旅の相棒である

「おま、お前……剣…!?」

「ふむ…惜しかったな」

「何だよその残念そうな反応!?」

彼女は無類のだんご好きである

ことあるごとにそれを頬張っているのだ

現在、フェリスはだんごを片手で口に運びながら、自分の持っている大きな剣をライナへと振り下ろしていた

実はこのようなことは彼らの間では日常茶飯事である

だからライナも彼女がおふざけで振り下ろす剣なんて、避けられるのだが

「ったくいつも容赦ねぇなぁ…で?」

「だんごを買い占めに行くぞ!」

やっぱり、とライナは思った

大体、彼女が自分を叩き起こしにくる理由はそれくらいしかないのだ

でも結構まんざらではなかったりする

構ってもらえて嬉しかったりする

だから、仕方ないなぁと言う感じで彼は立ち上がった





さて、場所は少し移ってウィニットだんご店

ここはフェリスお気に入りの店である

因みに…ライナと共に旅に出たのも、この店が壊されないためであったりする

フェリスは「新商品」と書かれたものを全て買い占め

さらには他のだんごまで買い占めた

しかもライナの金で

いつもこうなのだ、いつの間にか彼のお金はだんごへと消えていくのだ

だから、ライナは思った

いや、もう言ってやる!と

そして半ばやけくそに叫ぶ

「あぁ、もう!?いつも、だんごだんごだんごだんご!?
お前は俺とだんごとどっちが大事なんだよ!」

ライナは一気にまくしたてた

と言っても、結果は変わらないのだ

とりあえず言ってみただけなのだ

だが、フェリスは

「勿論、お前に決まっているだろう?」

と言って頬を染めたではないか

「は!?え……あ…あう…」

ライナとしては思ってもみない反応だったようだ

照れたような困ったような顔をしている

だが、そのすぐ後にフェリスに殴られた

「ぎゃあぁぁぁ!?って何すんだよ!?」

「……………ふん」

ライナは慌てて起き上がり文句を言う

が、フェリスはそれに反応せず、背を向けてどこかに行ってしまった

ライナはぽかんとしたまま、その場に取り残されたのだった





「…と、いう話を考えたんだけどどうかな?」

とある一室、銀髪金目のシオン・アスタールはライナとフェリスに楽しそうに自分が考えた話をしていた

「何でこうなるんだ!」

「おかしいぞ」

と、二人は文句ばかり

だが

「何言ってるんだ?フェリスはホントにライナのこ…」

「……っ!」

シオンが何か言い掛けると、フェリスはすぐさま剣で彼を叩いた

ライナが頑張ってやっと避けられる程度なのだ

シオンはあっさりと剣に直撃し、昏倒した

「…行くぞライナ」

「え?あ〜…うん」

ライナはその太刀筋に恐怖を覚えながらも、つかつかと歩いていく彼女についていったのであった




だんごよりも大切なもの
本人の前でなんて、言えない







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