それが舞い込んだのは、抜けるような青空が広がっている日だった

【近々そちらへ行く】

そう、一言だけ紙に書かれてそれはやってきた

プラナスはそれを見ただけでピンとくる

「お父さんだ…」

何となく、というか筆跡がそれである

昔から見慣れた字の書き方は、ちょっと雑だけど丁寧に並べられていて

それを見たプラナスは、少しだけ胸が苦しくなった

今はこっちの生活に馴染みつつあるというのに、昔の生活も懐かしくて、またしたいかもとか思ってしまう

「おや、お手紙ですか?」

そんなことを頭の中で巡らせていると、ふいに後ろから手が伸びてきて持っていた手紙を奪われた

「わぷっ……?ってノボリさん…」

「はい、わたくしです」

「何をしてるんですか?」

「?抱き締めておりますが」

不思議そうな顔をされた

伸びてきた手は手紙を奪うだけでなく、そのままプラナスを後ろから抱きすくめたのだ

そんな、いきなりのことに驚きつつも、いつものことかと流せる自分は、すっかり彼や彼の双子の弟との共同生活に慣れつつあるのかもしれない

あの日から、季節は巡ってしまって

プラナスは忘れられない

兄の事、それから父の事

二人とも今はどこにいるかわからない

家族だってわかってしまったその日に、彼らはどこかに行ってしまって

なのに、次の日からは何事もなかったかのように時間だけが過ぎていく

「プラナス様?」

「ん……ちょっと淋しくなっちゃったんで…」

きゅ、とノボリのコートの袖を掴んだ

ノボリは抱き締めていた腕をゆっくりと解き、プラナスの頭を撫でた

「うう、子供扱い…」

「いけませんか?」

「………いいですけど…」

プラナスはくすぐったそうに目を閉じて、ほんのりと頬を染めた

「プラナス様、観覧車の修理がおわったようですよ」

「観覧車…?ノボリさんが壊した遊園地の?」

「わたくしが壊したなんて…あれは不可抗力でございます」

ノボリは尚もプラナスの頭を撫でながら、そう言った

最初にノボリと出会った頃、彼はこのライモンシティにある大観覧車の柱を破壊したのだ

「以前、約束したことを覚えてらっしゃいますか?」

「一緒に乗りに行くって話ですよね」

「ええ、よろしければ…」

プラナスはくるりとノボリの方へ振り返る

「断る理由なんて、ありませんよ」

そしてそう言ってにこりと笑った

ノボリは彼女の笑顔が大好きだ

幼い顔立ちに一向に伸びる気配を見せない身長

彼女は最初に出会ったときから、彼の心を揺さ振ってみせた

自然と足を動かしてしまって、一人暗いホームにたたずんでいる彼女に、声をかけてしまった

放っておけなくて

だから、その後も強引に押し切った

今は、最初に彼女が困っていた問題も無事に解決している

けれど、それでも時折見せる悲しそうな顔は、何だろう

満たされないそれは、何だろう

ノボリは、それを埋めたいと思う

キスして、結婚して、デートして

あれから色々あったけど、まだ埋まりきらない隙間に時々、怖くなるのだ

「ノボリさん?」

「は………い…」

「どうかしましたか?」

「い、いえ…何でもございません」

「?…ならいいですけど…」

自分は彼女の手をずっと離さないでいられるだろうか

そんなことを考えながら、ノボリはゆっくりと足を踏み出した

「何だかんだ言って、二人で遊園地は初めてですね?」

「はい、あの時はわたくし、寝てしまいましたので…」

「あれはノボリさんが悪いんですからね」

「すみません、興奮してしまいまして」

ノボリは、ぷうっと頬を膨らませるプラナスを申し訳なさそうに見つめた

「ここの観覧車は一周が長いですから、色々お話できればと」

「何だかんだで、私達知らないことも多いですからね…」

「そうでございますね…しかし、これから先のことも考えると、わたくしはプラナス様のことを沢山知りたいですから」

「これから、先…」

「ずっと一緒にいてくださるのでしょう…?」

そっとプラナスの手を取って、ノボリは観覧車へと乗り込んだ

プラナスはちょっと頬を赤くすると、こくんと小さく頷いた

そのまま一緒に観覧車へと足を踏み入れると、ドアが閉まって景色がゆっくり動きだした

「二人きりですね」

「ええ……」

「き、緊張します…」

「いつも一緒にいるのにおかしいですね」

向かい合って席に座った

身長差のせいでプラナスは視線を合わせるためには上を向かなくてはならないのだが、今ではもう慣れたものである

しかし観覧車内の空気は少し息苦しくて、うまく上を向けない

「…一定時間といえど、密室だからでしょうか…」

「邪魔、が…入りませんから…ね…」

どくんと胸が高鳴った

顔がだんだんと熱くなり、つられて身体も熱を持つ

「ノボリさん、私が来た日のこと…覚えていますか?」

「勿論でございます…あの日がなければ、今のわたくし達はありませんから」

「私……最初、勢いで言っちゃって、本当に結婚することになって、びっくりしました
うまくやれるのかとか、知らない人なのにとか不安でいっぱいで…でも初めて一緒に眠った夜に、ノボリさんに手を繋いでもらって…すごく安心したんです
この人となら頑張っていけるのかなって、思いました」

「プラナス様…」

「その後、結婚の原因を作ったお金の話も解決して…私とノボリさんの関係がそこで終わってしまうんじゃないかって、少しだけ怖くなりました
でも、一緒にいようって言ってもらえて嬉しくて…私もちょっとずつ頑張ろうって思いました」

それだけ一気に吐き出して、プラナスはほうっと一息ついた

心臓の音がやけに大きく聞こえた

「つまり…えっと、何が言いたいかっていうと、結婚してよかったなって…そういうことです」

「…わたくしも、プラナス様と一緒になれて、とても嬉しいです」

「こんなこと、何度も言ってる気がするんですけどね…なんだが今凄く伝えたいなって思って」

そっと顔をあげた

自然と視線が合わさって、無言で見つめ合う

ノボリはそっとプラナスの肩に手をかけ、ゆっくり顔を近付けた

そのまま腰に手を回し、抱き寄せる

「…ん……っ」

甘い吐息が漏れて、シルエットが重なった

そっと離れた唇はとても熱かった

「プラナス様、わたくし…し……し、式を挙げたいのです」

「えっ…式…っていうと」

「結婚式でございます…わたくし達は籍を入れただけで式は挙げておりません
よろしければ…改めて…その…プロポーズさせて頂けませんか?
…わたくしと、結婚してください」

「あ、あ……えっ?えっと………は、はい…喜ん、で…」

プラナスがそう返事をすると、ノボリは林檎のように顔を真っ赤にして、嬉しそうに目を細めた

彼の口は相変わらずへの字だが、なんとなく口元が緩んで見えた

「準備、大変ですよ?」

「手伝ってくださるでしょう?」

「勿論ですよ…私知り合いの人に招待状送ってもいいですか?」

「ええ、その辺りは会場や予算と合わせて検討いたしましょう」

「…ちょっと楽しみです」

プラナスがそう言って顔を綻ばせると、観覧車のドアが開いた

どうやら、時間らしい

「すごく短く感じました」

「わたくしもですよ」

二人は再び手を繋いで地面に飛び降りた

ふわりとノボリのコートが風に舞う

「このまま、食事をして帰りませんか?」

「はい…と言いたいところですけど、そうするとクダリさんのご飯は大丈夫ですかね?」

「クダリもああ見えて立派な大人です…わたくし達が戻らずともきちんとご飯を食べるでしょう」

「今週のご飯当番はクダリさんですしね」

三人は週がわりで食事を作っていたりする

今週はクダリが腕によりをかける番なのだ

三人とも腕はそれなりで、毎食とてもおいしかったりする

「では、何を食べに行きましょうか」

「私、オムライスがいいです!」

「おやおや…」

「子供扱いは禁止ですったら!」

プラナスは子供舌と勘違いされているのが嫌らしい

不満そうに口を尖らせた

ノボリはそんな彼女を見てくすりと笑い

「ファミレスはやめて、少し値は張りますが専門店にいたしましょうか…クダリには内緒ですよ?」

そう言って、口に指を当てた




から始まる▲▽生活_11
オムライスは凄くおいしかったとか





プラナスは レベルが12に UPした! ▼
「愛力」が15あがった! ▼
「知力」が10あがった! ▼
「魅力」が10あがった! ▼
「運気」が5あがった! ▼
◎現在のプラナスのステータス
・愛力52(+15)
・知力36(+10)
・魅力40(+10)
・運気0(+5)
・やる気20
・逃げ足0



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