ノボリ達を背にし、走ってきた先には雷と炎が舞い踊っていた

「レシラム、クロスフレイム!」

「ゼクロム、クロスサンダー!」

探している人はその中心で火花を散らしている

その後ろには、先日プラナスの前で演説をしていた男性がひっそりとたたずんでいた

柱の影からこっそりと様子を伺う

二人でどうやって飛び出そうかと相談しようかとプラナスは横を向く

「あれ?」

と、そこには誰もおらず、見ればトウコは部屋の中心に向かって走りだしていた

「トウヤああぁぁぁぁ!!」

「え?この声…トウ…おぶっ!?」

どっしーんと床に二人が倒れこんだ

トウコがトウヤに抱きついたのだ

「と、トウコ…?何で、ここに……」

「トウヤを迎えに来たんだよ!わたし危ないって言ったのに何で一人で言っちゃうの?怪我したら危ないじゃん…心配したの!」

「だ、だってそれは……」

「それは?」

「それは…ぼくが行かないと、その…トウコがNに会っちゃうだろ…」

トウヤはぽりぽりと頬を掻いた

彼は妹のトウコが大好きである

彼は妹になるべく自分以外の男性を近付けたくないのだ

「え、ちょっと……一人で行ったのはそのため…?」

「勿論だよ…ぼくはNでもトウコに触れてほしくないから
でも来たらびっくりだよ、何だか色々ありすぎてわけがわからなくなっちゃった」

トウヤは照れ臭そうに笑う

そしてトウコも

「わ、わたしもトウヤが別の女の子と喋ったりするの、やだな…」

なんて言って頬を赤らめたものだから、背景があそこだけピンク一色である

トウヤの後ろに呆然としたゼクロムが立っていたが、やっぱり黒ではなくピンクである

「…ボクは?」

その中で、相手を失ったNは困惑したようにいちゃいちゃしている二人を見つめた

「Nの相手は私だよ」

と、そこへようやくタイミングを掴んだのかプラナスが柱の影から姿を現した

「プラナス、君もきたのか」

「うん、約束を守って止めに来たよ」

「そうか、来ると思っていたよ…」

Nはプラナスと向かい合う

「レシラムはゼクロムとの戦闘で疲れている…休んでいて…」

そして白いドラゴンの身体を撫でて、後ろに下がらせた

「ボクは英雄だ…しかしトウヤも英雄になった
二人も英雄は必要だろうか?そう最初は思ったけど、理想を求めるもの、真実を求めるもの…共に必要なのかな…よくわからない」

「どっちも大切なんじゃないの…?」

「そうなのかな…?でも今は、君との決着だよプラナス
ここにきたということはそれなりの覚悟を持ってきたんだろう…
だから、全力でボクを止めてみせてくれ…君の覚悟をボクに見せて」

「最初の相手がいなくなっちゃったしね…」

「それにはあえて触れないでおこう…本当はゼクロムとも決着をつけたかったが…彼らは、まあ…」

「うん…」

二人はちらりと横目で片方の英雄の様子を見たが、相変わらずいちゃついていた

「ここからは気持ちの勝負…勝ちたいという想いが強い方が…勝つ!ゾロアーク!」

はあ、とため息をつき、気を取り直してNはボールを投げる

中からは黒い狐のようなポケモンが飛び出す

「るくたん!応戦!」

プラナスもボールに口付けて、青いライオンのようなポケモン、レントラーをだした

「ナイトバースト!」

「ワイルドボルト!」

二つの技がぶつかり、光る

レントラーは黒い波動を受け、突進していく

全身に電気を帯び、それはみるみるうちにゾロアークの目の前へ迫る

「そのまま押し切って!」

「まずい、かわせゾロアーク…!」

ゾロアークは横に飛ぼうとしたが、それよりも速くレントラーが駆け抜けた

吹き飛ばされたゾロアークは宙を舞い、どさりと地面に倒れた

「そんな…ボクの、負け…?」

「ごめんね、私約束は破りたくない派なの」

プラナスはにこりと笑って、レントラーをボールに戻した

Nもゾロアークをボールに戻し、二人は再び向かい合う

しかし新たな声がそれを乱した

「やはり、血ですか…」

先程まで部屋の一番奥で、事の成り行きを見守っていた男性、ゲーチスだ

彼は困ったように肩をすくめている

「血…?」

「そうです、血ですとも…ワタクシは貴女とNを遠く遠く引き離したのに、結局ひかれあってしまったのかと思うと、最初の計画は台無しですよ」

「私と、Nを離す…?一体どういう…」

「ここまでワタクシが喋っても伝わりませんか?貴女とNは血が繋がっているのですよ、要は双子ですとも
しかし、ワタクシの計画には一人しか必要なかった…そして、ワタクシは貴女ではなくNを選んだ
もう片方は必要ありませんでしたからね、貴女を遠くへ置き去りにしたのですよ」

おわかり頂けましたか?とゲーチスは嫌らしく笑う

「なんて、今更言ったところで何も変わりませんが…なにせワタクシの計画は今日で終わるのですから」

そう言って、ゲーチスはボールを投げる

中からは黒い三つの首を持つドラゴン、サザンドラが躍り出た

「もともとワタクシがNに真実や理想を追い求めさせ、伝説のポケモンを現代によみがえらせたのは、ワタクシのプラズマ団に権威をつけるため!恐れおののいた民衆を操るためです!」

「そんな…」

「Nはとてもよくやってくれました
しかし、少し計算が狂ってしまった……貴女や、そこの二人が邪魔をしに来ましたから
Nにはまだプラズマ団の王であってもらわなければ困るのですよ……何も知らない人間の心を握っておくための、ね…」

「ゲーチス……!」

「おや、父さんと呼んでくれてもいいのですよ?」

にやにや笑いながらゲーチスはプラナスと距離をとった

「まぁ、そんなことを言うより先に、目の前の貴女達を排除しましょう
計画を知る者は、逃がしてはおけませんから」

そしてゲーチスはサザンドラに指示を出す

「あくのはどう!」

サザンドラは黒い衝撃波を辺りに撒き散らした

「ボクが…」

「ダメ、私が行く」

Nが前に出ようとしたが、プラナスは手でそれを制した

「でも、そしたらプラナスが…」

「大丈夫、だからNはトウヤくん達を…ピンクだけど」

プラナスはボールを取り出してそれにキスを落とす

彼女なりの挨拶だ

「よろしくね、はぴたん」

そして、そのボールからはタマゴをポケットに入れたピンクのポケモン、ハピナスが飛び出す

ハピナスことはぴたんはサザンドラのあくのはどうを受けるが、あまりダメージを負っていない

「相手はドラゴンタイプっぽいね…はぴたん、ふぶき!」

プラナスの指示にあわせて、はぴたんは辺りが凍り付きそうなほど強烈な冷気をサザンドラへ浴びせた

サザンドラはみるみる凍り付き、身動きがとれない

「くっ…まさかピンクの悪魔を出してくるなんて……なんでもなおしは…」

ゲーチスは慌てて道具を使用しようとしたが、その前にプラナスは彼の懐へ飛び込んでいた

「とうっ!」

そしてみぞおちに一発、拳を叩き込んだ

「ぐは……っ!?」

あまりにも予想外の行動だったのか、防御する間もなく受けとめた一撃はとても重たかったようだ

ゲーチスは膝から崩れ落ちた

「私の、勝ち?ふふ…ちょっと私怒っちゃったよ、お父さん?」

そのゲーチスの前にしゃがみ込み、プラナスは笑顔で彼の顎を持ち上げた

「とりあえずサザンドラボールに戻してね?危ないから」

「プラナス……貴女は…」

「詳しい事情はよくわからないけど、私とNは血が繋がってるんだね…
そして貴方はNを利用した…皆を騙した…そんなの、許せないよ」

ぐっと手に力がこもった

「ああ……こんな形で、ワタクシの…プラズマ団に…終わりがこようとは
世界を支配する、なんて…夢のまた夢でしたね…まさか、もう会わないだろうと思っていた娘にやられたのですから」

ゲーチスはそっとプラナスの手をどけ、立ち上がった

「ワタクシの夢は潰えました…これ以上の茶番は必要ないでしょう
娘に嫌いだと言われる前にワタクシは退散するとしますよ」

そして、それだけ言い残し、闇に溶けて行ってしまったた

そのゲーチスの姿が完全に闇に紛れるまで、プラナスはずっと見つめていた

「捕まえなくてよろしかったのですか?聞きたいこともあったのでは?」

「いいんです、きっとこれからあの人は何もしないと思いますから」

いつの間にやってきたのか、ノボリが隣に立っている

プラナスはおかえりなさいと小さく呟いた

そして、一人取り残されたNにそっと近づく

「プラナス……ボクは…ボクは英雄失格だよ…」

「何で?Nはゲーチスの意見に沿うだけじゃなくて、自分で考えて行動したんでしょ?だから、レシラムも振り向いてくれたんじゃないの?
それに、これからレシラムやNのポケモン達とどうしていくかっていうのが大事なんじゃないかなって私は思うよ」

「でも…」

「N……お互い理解しあえなくても、否定する理由にはならないよ
そもそも、争った人間のどちらかだけが正しいのではないんじゃないかな…」

「そうか…そうだね」

Nはふっと微笑んだ

「異なる考えを否定するのではなく、異なる考えを受け入れることで、世界は化学反応を起こす…これこそが、世界を変える数式なんだね」

「きっと、そうだよ」

「ありがとうプラナス……ボクは君達のおかげで前に進むことが出来そうだ…
だから、ボクはこれからレシラムと共に世界を回ってみるよ…しばらくここには戻らない」

Nはレシラムの身体を軽く撫でた

「ボクも広い世界を見てみたい、プラナスが行ったところや住んでいたところに行ってみたい
だから、ボクは行くよ」

そしてゆっくり後ろを向いた

プラナスはその背中に向かって思わず口を開く

「N…私、あの時わからないって言ったけど………私、皆で仲良く過ごしたい…
今までずっと旅してきたけど、イッシュにきてノボリさんに会って…皆と会えて嬉しかった…
だから、こうして毎日お喋りして過ごすだけでも凄く楽しくて……そんな夢でも、見ていいよね…?」

「…勿論だよ」

「私、Nとも、一緒に過ごしたい…やっと少しお互いのこと、わかってきたばかりなのに……」

「ごめんね、でも決めたことだから」

Nはゆっくりとプラナスの方へ向き直った

「……ナチュラル、お兄ちゃん…」

「っ……プラナス、君はずるいな…そんな顔して泣かないでくれたまえ…決心が鈍ってしまうじゃないか…」

「だって……」

「また、戻ってくる…必ず…だから、少しだけ我慢して待ってて…」

大丈夫だから、とそのまま頭を撫でられ、髪にキスをされた

「夢が叶うように、おまじない」

耳元で囁かれ、温もりがそっと離れていく

手を伸ばしても届かずに、目に涙がたまって目の前の景色が滲んだ

今にも倒れそうなプラナスを、ノボリが横からしっかり支える

そんな光景を見ながら、Nはふっと頬笑む

「ボクの妹は幸せだね……ノボリ、ボクがまたここにくるまで…妹を…プラナスを頼むよ」

そして、そう一言言い残して、彼は白いドラゴンと共に飛び去った

彼にとっての、新しい世界へ

「守り通してみせます…わたくしの大切な…」

ノボリは飛び去る彼が見えなくなるまで、空を見上げていた




から始まる▲▽生活_10






プラナスは 「双子の妹」の称号を 手に入れた ▼
プラナスは レベルが11に UPした! ▼
「愛力」が18あがった! ▼
「知力」が10あがった! ▼
「魅力」が14あがった! ▼
「運気」が5あがった! ▼
「やる気」が9あがった! ▼
◎現在のプラナスのステータス
・愛力33(+18)
・知力26(+10)
・魅力26(+14)
・運気−5(+5)
・やる気11(+9)
・逃げ足0



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