明々と部屋に明かりが灯っている

ノボリがプラナスに追い付いてから、ケーキを二人で食べて帰ってきた

プラナスは帰ってきてからというもの、始終浮かない顔である

ノボリ達が何があったか聞いても、曖昧な返事ばかりではっきりと答えてくれないのだ

「ホントに、何があったんだろうね」

「ずっとあの調子です…何か考え込んでいるという感じでしょうか…」

ノボリがケーキ屋の前にいるプラナスを発見した時には、周りに誰もいなかった

そんな静かな空間に立ち尽くす彼女を見て、ノボリが慌てて駆け寄ったことはとても記憶に新しい

「…そういえばクダリ、このイッシュに伝わるドラゴンの話…わかりますか?」

「ノボリったら…僕もイッシュの人間だよ?」

「そうですよね…」

「どうしたの?」

不思議そうに首を傾げるクダリを見て、ノボリはプラナスに駆け寄ったときのことを思い出す

彼はその時見た気がしたのだ

彼女の遥か後ろを飛んでいる、白いドラゴンを

「もしかしてノボリ、見たの?」

「かもしれません…遠目でしたので、それとは言い切れませんが…」

「もしかして…プラナスの悩んでることと、何か関係があるかも」

「そうでしょうか」

「ん〜…とりあえず聞いてみよ!」

クダリはプラナスの肩を軽くつついた

「ひゃわっ?……ってクダリさん」

いきなり触られてびっくりしたのか、プラナスは身体を縮めた

しかし、知り合いだとわかったら安心したのかふにゃりと顔を緩める

「この部屋、僕ら三人しかいないんだからそんなに驚かなくてもいいのに」

「ご、ごめんなさい…考え事してて…」

「その考え事って、何?…プラナスもドラゴン見たの?」

「いやいや違いますよ…って、ドラゴン?」

「うん、このイッシュに伝わる話…白と黒のドラゴンポケモン」

二人は代わる代わる話しだした

昔聞いた話、今も尚言い伝えられている、イッシュの神話を

「その昔、そのドラゴンは多くの民が争っていたこの地で、どうしたら彼らを一つにまとめられるのか…という理想、または真実を追求した英雄の元に現われ、知識を与え、歯向かうものには牙をむいた…
英雄とポケモンのその姿、その力が、皆の心を一つにし、このイッシュを作り上げた…と言われております」

「白いドラゴンのレシラムと黒いドラゴンのゼクロム
レシラムは理想を説いて、ゼクロムは真実を説く…
……確か神話では、レシラムは激しい炎を噴き上げて、ゼクロムは強力な電撃を放って、太古のイッシュを一瞬にして荒廃させた……世界を滅ぼす力を持ってるんだって」

「イッシュにそんな話が……しかもドラゴンは二匹いるんですね」

プラナスが今まで旅してきた土地にも、そういえば沢山言い伝えがあったことをちょっと思い出す

「それで、そのドラゴンがどうしたんでしたっけ」

「うん、プラナス見たことあるのかなぁって」

「それは…うーん、どうなのかな…」

見てない、と言えば嘘だとプラナスは思う

見た、恐らく彼が飛び立つとき

彼を乗せていたあれは…

「見たかも、しれにゃあっ!?」

プラナスが最後まで言い切る前にドアが開いて誰かが飛び込んできた

思い切り抱きつかれ、その勢いでプラナスは押し倒される

「うわぁぁぁぁん!!プラナス〜〜〜!」

「だ、誰?えっ何…?ちょ、えっ……トウコちゃん…?」

後頭部を軽く床にぶつけた

おかげで頭がくらくらするが、なんとか頭をあげると自分の知り合いがべそをかいている

「な、何で泣いてるの……大丈夫…?」

一応身長は彼女より小さいが、年は彼女よりちょっとだけ上である

ぽんぽんと頭を軽くなでると、彼女のポニーテールがふわりとゆれた

「ううう…プラナス……ぐす…急にごめん…」

「い、いいよ……平気…?」

目を擦りながらしゃくりあげているトウコに、ハンカチを渡した

見れば目は赤く腫れ、頬には涙の跡がある

ずっと泣いていたのだろうか

「と、とにかく落ち着いて……ノボリさん、ホットミルク!」

「かしこまりました!」

「ぼ、僕は僕は?」

「話があっちこっちいきそうだから紙とペンを…」

「わかった!」

どたばたと走り去る白黒の双子を背に、プラナスはゆっくり起き上がった

「はう…チャイムもノックもなく入ってきてごめん…」

「いいよいいよ、落ち着いた?」

「ん……」

渡されたハンカチで残った涙の雫をぬぐってから、トウコは深呼吸した

「……で、どうしたの?トウヤくんは?」

「あ……うん…あの、あのね……トウヤをね……ううん…二人をね、止めてほしいの」

直後、部屋に電話が鳴り響いた




から始まる▲▽生活_09




「止める…?二人……って…?」

「…トウヤと…N…」

「N…トウコちゃんはNを知ってるんだっけ?」

「旅先でよく絡まれたよ
そのたびにトウヤが必死に割って入ってきたけど…わたしはプラナスがNを知っている方がびっくりだな」

「ああ、うん、色々あってちょっと知り合いなの…
それで、どうして二人を?」

トウコはちょっと目をそらす

「……トウヤはポケモンリーグに行ったの…」

「リーグ…じゃあNもリーグにいるの?」

「少し前にNがやってきて、ボクを止めてみせろって…多分いるんじゃ、ないかな…」

彼らも、Nにとって追い掛けてほしい人なのだろうか

プラナスは先日Nと話したことを何となく思い出す

「Nがきたときと同じくらいにね、黒い石のようなのを見つけたの…どうやらトウヤがリーグに行ったのはそれも関係しているみたい
Nはその時、白いドラゴンを連れてた…それで、わたし達が持ってる石はもう片方の黒いドラゴンだって言うの」

「黒い…ゼクロム…」

「英雄は二人もいらないって、だからゼクロムが復活したら戦ってどっちが英雄か決めるって…Nが言って…止めたんだけど…私がちょっと目を離した隙にトウヤは…」

どうしよう、とトウコは顔を伏せた

「トウヤくんは、Nがしようとしていることを止めようとしたんだね」

「うん」

「私もNを止めなきゃいけないと思うの…だって私もNに言われたから」

「プラナスも…?」

「ドラゴンも…ゼクロムが復活して、Nが連れていた白いドラゴン…レシラムとぶつかったら危ないよ」

「そ、そうだよね…」

「私も今まで色んなとこ旅してきたけど、こうやってたまに大きな事件に関わることもあったし…
その時も大体誰かが裏で糸を引いてたり、伝説や神話上のポケモンが関わったりしてた
だから、何か大事にならないうちに止めなきゃ」

プラナスはトウコの手をそっと持ち、じっと彼女の目を見つめる

「私はNを止めたい、トウコちゃんはトウヤくんを止めたい……一緒に止めに行こうよ」

「う、うん…」

綺麗に輝いているその瞳からは、トウコの気持ちがひしひしと伝わってくるようだ

そんなところへ、ノボリがカップを四つ持ってやってくる

「お待たせしました、ホットミルクでございます…暖まるように蜂蜜と生姜を入れましたよ
しかしお二人とも、一体何の話を…」

「ポケモンリーグに行くって話です」

「ほう…四天王に挑戦でございますか?」

「ううん、トウヤくんとNを止めるの」

「トウヤ様と、N様を…?それは一体…」

どういうことでしょう、というノボリの言葉は最後まで続かなかった

後ろからクダリが凄い勢いで走ってきたのだ

振動でガタガタとミルクの入ったカップが揺れた

「ノボリ!大変!電話がね…とにかく大変!」

「クダリ、少し落ち着きなさい…電話?わたくし達の家にかけてくる方なんて誰かいらしゃいましたでしょうか…」

「んとね、カミツレからだよ!」

「カミツレ様?何のご用でしょうか?」

クダリから受話器を受け取り、耳をあてる

そこからはちょっとというか、かなり慌てたような口調で喋る女性の声

ノボリはその声に耳をすませた

「カミツレさんって誰…?」

「このライモンシティのジムリーダーだよ」

「あ、そっかぁ…リーグがあるならジムもあるよね…!」

「プラナスもバッジ持ってるの?」

「イッシュのバッジじゃないけど、一応全部集めたよ」

その横で女子二人は仲が良さそうにバックの中身をがさがさと漁ったりして盛り上がっている

さっきのシリアス空気は何だったのだろうか

対称的にノボリは段々と表情が険しくなる

一通り話を終え、三人の方へ向き直った彼はちらりとクダリに目配せした

クダリはそうだね、と頷く

「プラナス様…先程のリーグに行くという話ですが…わたくし達も同行してもよろしいでしょうか?」

「え?ん……いいよね?」

「いいんじゃないかな…」

プラナスとトウコは顔を見合わせた

「それで、ノボリさん…さっきの電話の内容って…」

「はい、それなのですが…先程ポケモンリーグに巨大な城のようなものが出現したと…話が…」

「城の上からは炎や雷が飛び散ってるって…ジムリーダーの皆も、この異常事態にリーグに集まってるみたい…」

「それは…」

「恐らく、先程お二人が話していたことでしょう…
もうすでに始まっている…ならば、これ以上大きくならないうちに止めなくてはなりません」

「あれ、ノボリさんったら私の意見と一緒ですね?」

「相思相愛ですから」

「ば……っ…また、こんな時にそんな台詞を…」

プラナスは顔を赤らめるが、抵抗はしなかった

「結局二人とも恋の矢に射られちゃったんだね」

クダリはにやにやしながら、そんな二人を見守っている

「クダリさん、それってとういうこと?」

「うん、あの二人結婚してるんだよ?」

知らなかった?とクダリは笑った

トウコは開いた口がしばらく塞がらず、困ったようにクダリのコートを引っ張った

「ちょっと、初耳…なんだけど…」

「ホント?じゃあ後でゆっくり本人に話聞いたらいいと思う!でもまずは」

「やることしなきゃでだね!」

トウコはゆっくり立ち上がる

プラナスも、トウコの手を掴み二人で歩きだした

「女の子って強いね」

「そうですね…」

その背中を、白黒車掌は頼もしそうに見つめた





プラナスは レベルが10に UPした! ▼
「愛力」が3あがった! ▼
「知力」が5あがった! ▼
「魅力」が3あがった! ▼
「やる気」が4あがった! ▼
「逃げ足」が3あがった! ▼
◎現在のプラナスのステータス
・愛力30(+3)
・知力21(+5)
・魅力23(+3)
・運気−5
・やる気7(+4)
・逃げ足−3(+3)



[戻る]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -