ズズンと大きな音をたてて地面がゆれた

地震かと思ったがそうではないらしい

ダブルトレインで今晩の夕食について熱心に話し込んでいたクダリとプラナスは、音がした方をぱっと振り向いた

「あれ……」

ダブルトレインはちょうど駅に到着したところで、ホームに停車していた

プラナスは車内清掃でもしようかと一度乗車し、休憩に向かう途中のクダリにばったり会ったのだ

そこで思わず話し込んでしまったのだけれど

「電車……動いてる…?」

振り向いた先は後部列車の窓

電車が停車し、本来ならば景色が止まっているはずなのに動いている

気が付けばいつの間にかサイドドアも閉まっている

「待って……これおかしい」

クダリはカツンと靴を鳴らし、窓に歩み寄った

見間違いかと思ったが違う、本当に動いている

「まだ休憩終わってないよ、どういうことなの」

ガタゴトと音をたてながら電車はどんどんスピードをあげていく

どうしたものかと二人で顔を見合わせた時、クダリのコートからピリリと音が鳴った

「ライブキャスター…」

クダリはコートから機械を取出し、ボタンを押した

『………ダリ……ます……』

ザザと雑音が交ざり聞こえてきたのは二人には大変聞き覚えのある声だ

「ノボリさん?」

「そっか、地下だから電波が…聞こえる…?」

『クダリ…でてくれましたか…声がするところを見ると、プラナス様もそちらにいらっしゃるのですね』

クダリとそっくりな双子の兄弟、ノボリはプラナスの夫である

色々あってほぼ段階を踏まずに結婚した

しかしその色々も既に解消されつつある

ノボリは今までの発言からロリコン疑いがかけられているが、どうも最近は疑いがますます強まっているもよう

そんな彼は何か緊張したような口調だ

「一体どうしたの?僕達勝手に電車が動いて…」

『そのことですが、シングルトレインも走ったまま止まらないのです』

「え、何それ…」

『通信を回しても、運転手から反応がないのです…何か嫌な予感がします』

空気が一瞬ひやりとした

理由もわからないのに不安が駆け抜ける

『わたくしはこれから先両車両まで様子を見に行って参ります』

またザザザと雑音が交ざった

いつ切れてもおかしくないくらいに、声は小さくなったり大きくなったり、ときどきぷつりと声が途切れてはまた聞こえる

まるで三人の気持ちにつられるように

『何かあればまた連絡いたします』

「ボクも見てくる」

『ええ……』

「ノボリ因みに今どこ走ってるかわかる?」

『ダブルトレインの少し前かと…明かりが後ろに見えますから』

クダリはすっと顔をあげた

見据えるのは先のドア

「ボクも何かあれば連絡する、ノボリ気を付けて」

そしてプツリと通信を切って、ゆっくりと前に歩きだした

「プラナス…一緒に行こう
待ってる方が危ない気がするから」

「何かあれば私もでます」

「ノボリの大切なプラナスにそんなことさせられないよ、でも」

クダリはプラナスの手をぎゅっと握った

「これくらいなら、いいよね」

足元気を付けて、とそう言って歩きだす

ドアを通るたびに車内をキョロキョロと見回すが、特に変わったところはない

何もなかったかのようにしんと静まりかえっている

「お客さん降りた後でよかった」

響くのは自分達の声と靴の音

「やっぱり最後のドアが怪しいよね」

次はいよいよクダリがいつも戦っている部屋だ

しかし、自分が歩いてくる間に何も変なことはなかったのに

ガラリと戸を開けると、やはりというか思ったとおりというか誰かいる

こちらに気が付いて襲ってくるのかと思ったが、そうでもない様子だ

「まずい、まずいぞ…」

「想定外だ…これはプラズマ団としてマズイ…縮めてプラズマズイ…!」

相手は三人のようで、輪になってぶつぶつと話し込んでいる

「バカバカバカ!もひとつおまけにバカ!可愛く言ってあんぽんたん!」

「仕方ないだろ!いじったら反応しないどころか煙あげたんだから!あいつツンデレなんだよ!」

「デレなんて一切なかったじゃないの!」

「キミ達何してるの…」

「うわぁ!?」

真剣に大声をあげて言い争いをしているところに、にゅっと首がのびてきた

三人の男女はびくりと飛び上がる

「クダリだ!」

「うん、僕クダリ」

「貴方に話があるのよ!」

「えっと……電車…」

「我々が乗っ取らせてもらった!」

しかしすぐに立ち直り、バン!と三人の男女はドアを開けた

するとそこには椅子に座ったままのびている運転手

「我々はプラズマ団!ただちにポケモンを解放せよ!」

「プラーズマー!」

「キリッ!」

三人はばらばらにポーズをとった

着ている騎士のような微妙なデザインの服と相まってちょっと見ているのが辛かったりする

「ポケモン解放って、どういうこと?」

「ここはバトルサブウェイ…ポケモンが日々バトルで傷ついている、そんな光景私達は見たくない」

「それは…」

「数々のポケモンが捕まり、生まれ、一匹だけが選ばれる……預けられたポケモンはどうしたらいいんだい?」

「……」

ちくりと胸が痛む

「僕、みんな大事にしてる…」

「ふふん!どうだか!」

プラズマ団はさっとボールを取り出した

そして中から二匹のポケモンが飛び出す

「実力でわからせるのみ!レパルダス、ふいうちっ!」

「ミルホッグ、いかりのまえば!」

あまりにも急なことで一瞬反応ができなかった

しかも技はクダリの方へは向かわず、後ろにいたプラナスへと向かう

にやりと笑う団員の顔が見えた

「危ない!」

やっと動いた身体は、ばっとプラナスを庇うように前に出た

クダリは全身で技を受け、片膝をつく

白かったコートにじわりと赤が滲み、埃で黒く染まった

「クダリさ……」

「大丈夫」

ぱんぱんと埃を払い、クダリはそう言ってゆっくりと立ち上がる

「持ってて」

そしてクダリはバサリとコートを脱ぎ、プラナスの肩へかけた

「…僕怒っちゃった、今日は本気の本気で相手する」

ちらりと目に怒りの炎がゆれた

「僕の大好きなノボリ、ノボリの大好きなプラナス、大切な二人を傷つけようとするなんて僕許さない」

踏み出した足で床がカツンと鳴った

「ノボリはきっと大丈夫、だから今は僕がプラナスを……守る」

クダリはボールを二つ取り出す、そして

「僕クダリ、サブウェイマスターしてる
ダブルバトルが好き、2匹のポケモンのコンビネーションが好き、そして、勝利するのが何より大好き」

指で帽子の鍔を弾いてから、それを投げた

「ドリュウズ!シビルドン!」

ボールからは二匹のポケモンが飛び出し、ズンと音を立てて床に降りる

「シビルドン、ほうでん!」

ばりりと音がしてシビルドンの身体から電気が溢れ出た

「ドリュウズ、じしん!」

今度はドリュウズが床を思い切り揺らす

「シビルドンのとくせいはふゆうだから地面技は効かないよ
ドリュウズは地面だからほうでんは無効」

ほうでんもじしんも全体攻撃技で相手にも味方にも技が当たる

しかしクダリはそれも踏まえて手持ちから二匹を選んだようだ

お互いの技が効かない二匹は、思い切り技を放っても大丈夫

相手の場にでているポケモンは二つの技が直撃し、戦闘不能になった

「はい、終わり」

そして、動揺するプラズマ団を前に、そのままクダリは前に走り二人に勢い良く手刀を叩き込んだ

「もう一人…は」

戦わなかったもう一人探し、振り向けば、プラナスが三人目の頭を手でぐりぐりとしているところだった

「あれ、戦闘したの…」

「はい」

「おわるの早くない?」

「いやいや…それより電車止めないと」

「そうだった!」

プラナスに言われてクダリは慌てて操縦席へと駆け込む

しかし、プラナスに頭をぐりぐりされていたプラズマ団が言うのだ

「あ、ブレーキ壊れ…」

「えっ」

「だからブレーキ壊れたの!電車止まらないの!」

「ちょっと…それ、まずいんじゃ…」

「だからプラズマズイって言ったじゃないか!このままだと前の電車に激突するのだよ!」

プラズマ団は半ばやけくそにそう言った

操縦席の窓を見ると、みるみるシングルトレインが近づいてくるのがわかる

無効は既に動きを止めていたようだ

「わ、わ…ブレーキ…!」

「だから壊れてるんだって!」

「もうっキミ達ホントに何してくれてるの…!」

クダリはガチャガチャと動かしても反応しない機械に少しだけ苛立ちを覚える

「クダリさん」

「何!?」

「非常事態なので、少し荒々しいのを許してくださいね」

「それくらいはいいけ……え…?」

そんな中、後ろから話し掛けられ、適当に返事をする

しかし、すぐに相手の声が自分とさっきまで一緒にいた人物だと気が付く

ぱっと振り向いたときには、既に彼女はいつもの行為をし終わったところであった

「らぷたん、ハイドロポンプ」

ボールから飛び出した、らぷたんこと波乗りポケモンラプラスは、電車のドアに向かって勢い良く水を吐き出した

水はドアを突き破り線路を水浸しにする

それはもう車輪が埋まって、床にも染みるくらいに大量だ

プラナスはラプラスの背中に乗り、そのまま線路へと飛び降りた

「ふぶき!」

そして流れる水に向かい技を放つ

ふぶきによってもたらされた強烈な冷風と氷の欠片が一瞬で水を凍らせた

それに浸っていた電車の車輪も巻き込まれ、急ブレーキのように車両が揺れる

がりがりという氷を削る音がしたが、程なくして電車はストップした

「プラナス様!」

それを見届けた後、プラナスがラプラスにありがとうしてボールに入れると、シングルトレインからノボリが飛び出してきた

そして勢い良くプラナスを抱き締める

「よかった…ご無事で…!」

「ちょっと…また、いきなり…」

胸に顔を埋めながら苦しそうにプラナスはもがいた

ノボリはしばらくプラナスを抱き締めていたが、電車から降りてきたクダリを見て、ぱっと手を離した

「クダリ!ぼろぼろではありませんか…!」

「うん、ちょっと色々ね?……とりあえず話は戻ってから」

コートの汚れを払いながら、クダリは来た道を指差した

「そうですね…」

「あ…それと僕ね…」

ゆっくりと歩き始めたクダリだが、何か思い出したようにくるりと振り向いた

そしてにこりと笑ってノボリの耳元でこう言うのだ

「僕ね、プラナスが好き」

「はっ……?」

ノボリはぽかんと口を開けた

「あは…友達としてだよ?」

クダリはそんなノボリを楽しそうに見つめて、そう補足した

「そ、そうでしたか…」

「びっくりした?」

「全くです」

「大丈夫、僕何もしないから」

クダリはぽん、とプラナスの頭を撫でた

プラナスは不思議そうに首を傾げる

「さ、帰ろ!」

そして、クダリは二人を背にして再び歩きだした

二人もゆっくりとクダリの後を追う

「まぁ…こんな大事なこと、僕が嘘つくわけないけど…誤魔化すのって大変だね」

クダリは後ろからやってくる二人を待ちながら、そう小さくぼやいたのだが、それは線路の暗闇に吸い込まれていった




から始まる▲▽生活_06
くるくる回る恋愛模様?





プラナスは レベルが7に UPした! ▼
「愛力」が3あがった! ▼
「知力」が3あがった! ▼
「魅力」が3あがった! ▼
「やる気」が5あがった! ▼
◎現在のプラナスのステータス
・愛力20(+3)
・知力13(+3)
・魅力14(+2)
・運気−5
・やる気1(+5)
・逃げ足−3



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