「この間は放っていっちゃってごめん、トウコが心配で…」

「あー」

「でもせっかくボスまでいったのに…というか、ちゃんと話できた?」

「うん、なんとか」

「それはよかった、この前のお詫びといっては何だけどこれあげるよ」

ふらっとギアステーションにやってきたトウヤはそう言ってプラナスに一枚の紙を差し出した

彼は今日はこれを渡しに来ただけらしい、バトルをすることもなく去っていった

プラナスはこの間もらった制服に身を包み、ホームの目立った汚れをごしごしこすっていたが、動きを止めて渡された紙をちらりと見る

「…チケット?」

今回の事の始まりはこれである

ノボリ達にそれを見せに行くとちょっと驚かれた

「近くにある遊園地のチケット!」

「しかも無料パスですね……これ一枚で何でも乗り放題でございます」

「これレアだよ、どうしたの?」

「あ、トウヤくんが持ってきまして」

プラナスはいきなりトウヤがやってきたことを話す

二人はちょっとそれを不思議に思ったようだ、顔を見合わせる

「プラナスこれ使って遊園地行くの?僕も行く!今すぐ行く!」

しかし二人はそんなことはあまり気にしないらしい

特にクダリはプラナスの手を握って顔を輝かせた

だがノボリはその手を掴んで無理矢理引き剥がし

「いけません!お仕事してくださいまし!」

と、机の上の紙束を指差してそう言った

紙束は山と積まれ、今にも崩れそうだ

「むーノボリの意地悪!ロリコン!」

「で…ですからロリコンではございませんと…」

「じゃあノボリ、プラナスが大きくなってスタイル抜群になったらどうするの?」

「…そっ…それは……困ります…わたくしのプラナスは小さくて可愛らしくて幼くてスレンダーで幼くて…それをじっと見つめるのがよいのです!」

ノボリは拳をぐっと握った

「ノボリさん…」

そんな彼を見て、プラナスはにこりと笑い、持っていたペンをバキリと折った

「はっ?わたくし何を…」

その音で我に返ったのか、ノボリは慌てて口を押さえる

しかし時すでに遅し、プラナスは立ち上がりすたすたと部屋から出ていく

「プラナス様、お待ちくださいまし…!」

「いやです、きのたんきのこのほうし」

ノボリは必死に言い訳するものの、いつの間にかプラナスの横にいたキノガッサからもろに胞子をくらい、崩れ落ちた

「さあ行きましょう」

プラナスはそれを見届けてからドアをバタンと閉めた

「ほ、ホントにいいの?」

クダリは慌ててプラナスの後を追う

「どっちにしろチケットには二名までと書いてあったので、これでよかったんですよ」

「そうかな…」

「そうです」

プラナスはぐいぐいクダリの背中を押しながらゲートを潜った

目の前にはジェットコースターにメリーゴーランドといった様々なアトラクション

そして奥には大きな観覧車

プラナスは久しぶりに見るそれらに心踊る

「ここのコースター怖くて面白いよ!」

クダリは楽しそうにコースターのゲートへと近づいた

「ホントですか?それいきましょ…」

プラナスも続いてそこへ駆け寄るが、一瞬で表情は固まる

【145cm 未満のお子さまは乗車することができません】

「………お子…」

その注意書きの看板を見て、プラナスはうっすらと涙を浮かべた

クダリは地雷踏んだかなあと思いつつも

「因みにいくつなの?」

とか聞いてみる

「143 …」

返事がないかもしれないと思ったが、ぐすん、と鼻をすすってプラナスは答えてくれた

クダリは改めてプラナスをじっと見つめてみる

幼い感じの顔にぱっちりと開いた瞳

華奢な身体だと思う、小さくて細くて触ったら壊れてしまいそうだ

髪は腰くらいまで垂らしているのだろうか、癖っ毛なのかところどころぴんぴん跳ねている

そんな彼女、ノボリがとても夢中な彼女

初対面なのに守ると宣言して、さらには結婚まで

よほど彼の中でツボったのだろうか

でも自分も、きっと…守りたいと、思うのかもしれない

双子なのだから、きっと好みは似ると思う

だけど、今は

「プラナス、他のに乗ろう?観覧車とかなら制限もないよ!」

この関係が崩れるのは怖いから、そう言って笑って逃げてみる

「ちょっと待ってて!僕飲み物買ってくる!」

そして逃げ場所を求めて少し離れてみたり

プラナスのたまりかけていた涙を指で拭って、頭を撫でておいた

ゆっくり遠ざかる彼に、プラナスは手を振って

クダリが見えなくなると、プラナスは近くのベンチに座ろうかと歩きだす

だが、横から誰かに肩を捕まれそれは叶わない

「だっ…」

誰?というプラナスの言葉は途中で飲み込まれる

ノボリかと思ったらどうも違うようだ

帽子を被った青年、緑の髪に整った顔立ち

プラナスは青年の姿を見て、試着室でのことを思い出した、いつかの覗き魔である

「やあ待っていたよ!待ちくたびれたよ!行こう!」

と、覗き魔ことNはプラナスの腕に自分の腕を絡めて歩きだす

しかしその足取りは何だかふらふらしていて、見ると彼はサングラスのようなものをしている

ハイライトのない彼の目はそれで隠れ、さらに怪しい人物だ

「な…何かけてるんですか…」

「ああこれかい?くろいメガネだよ、悪タイプの技の威力があがるアイテムだよ」

「…………いやそれはわかりますけど」

「うん、ボクはポケモンの気持ちを知りたくてね、自分も同じ道具を使ってみることにしたんだ!」

おかげで前が見えないけどね、とNは言う

プラナスは前回感じたことは本当のようだと納得した

彼、ちょっと電波である

「観覧車に乗ろう、ボクは観覧車が大好きなんだ…あの円運動…力学…美しい数式の集まり…」

「いや、あの私人を待って…」

「トウヤかい?彼はきているの?チケットは二人まで大丈夫だし、そりゃあそうだよね
僕も彼に会いたいな、でもたまにはボクと一緒にいてよ」

「トウヤ?」

抵抗するすべもなく、するりと観覧車に連れ込まれた

「誰にも邪魔されないように、ここにはボクたちしか乗っていないよ…ちょっと人払いしてもらったからね」

「あの」

「しかし、このくろいメガネ、本当に何も見えないんだね、ボクのトモダチに………さっきから何だい?」

「人違いな気がするんですけど…」

プラナスは仕方なく彼の目の前の席に腰掛ける

向かい合う仕様なので必然的に顔はかえを見ることになるのだが…

Nはそっとメガネをとり

「あれ、トウコじゃない…トウヤでもない?」

と、衝撃を受けた顔をした

プラナスは今更ながら、トウヤが自分の元になぜチケットを持ってきたのかわかった気がした

「おかしいな、確かに間違いないと…キミは彼らより凄く小さいし見間違えるわけが…」

「小さくてすみませんね…メガネのせいだと思いますよ」

「メガネ…そうか…見えなかったから…」

Nは困ったなと顎に手を当てる

直後、がたんと観覧車が動きを止めた

「わっ?」

その衝撃でプラナスは前につんのめる

Nはそっと転がってきたプラナス抱きとめた

「ああ、観覧車を止めてとは言ってないんだけどな…」

そして彼は窓の外を覗き込む

プラナスもつられて外を見ると、なんと乗り物がみんな止まっている

「え、なんで…?」

「電気が止まったんだ、いや…止められたんだろうけど
この状態だとさすがに身動きがとれないよね」

驚くプラナスを横に、Nははあとため息をつく

「つまり閉じ込められたって事ですか?」

「たぶん、復旧までかかるだろうからしばらく僕とこのままだね、だけど」

「…」

「それより、このまま抱き締めておくかい?」

「いえ、お断わりします」

プラナスはさっきぶつかった状態のままだと気が付いた

さっさと離れようとしたが、逆にNの腕に力がこもる

「キミ、暖かいね?」

「あの、離してもらえますか?」

「確かちょっと前に会ったよね?名前はなんていうの?」

「プラナスです…頼むから話聞いてください…」

「そうかプラナス…いい名前だね
ねぇプラナス、もうじきこの観覧車は大きくゆれるんだ」

Nがそう言うと、確かに下から何か大きな音が聞こえた

「ここも危ないよ、だからでよう」

「でる?…って」

「飛ぶんだよ」

「そんなまたまた……あいきゃんふらいなんてできっこな…」

「大丈夫、ボク達ちゃんと助かるから」

さあ行こう、と

床が大きく揺れたと同時に、Nはプラナスを抱き抱えたまま外へ飛び出した

まあ観覧車の戸がこんなに簡単に開くわけがないのであるが

「仕様だから許してね」

「仕様とかそういう問題じゃな………あれ?落ちてる?落ちてるよおおおわあああ!?」

つく場所をなくした足は真っ逆さまへ地面へと落ちる

プラナスは手足をばたばたしてみたが、どうにもならないので腰に手を伸ばした

「ちっ…ちるたん!」

そして、いつものようにボールに口付けてから空中に放る

中からはふわふわとしたものを身にまとったポケモン、チルタリスが飛び出す

チルタリスはドラゴンポケモンだが、ちょっとそういう風には見えなかったり

「ちるたん、そらをと……え?二人も無理…ってそれはます……」

飛行タイプも持っているので秘伝技である「そらをとぶ」も覚える

しかし、チルタリスの大きさからして二人も乗せるのは無理だと思ったようで、ふるふると顔を横に振られる

尚も身体は宙に浮いているが、流石にやばい、怖くて下が見れないが地面が近い気がする

「わ、わかった……じゃあ衝撃だけでも………コットンガード!」

コットンガードは一時的に自分の防御力を上昇させる技である

チルタリスもこれならば、と思ったようだ

まとっている綿のようなものがむくむくと膨らむ

二人はぼすんと音を立ててその中へ落下した

しかし、その反動でNの腕からプラナスは投げ出される

「あれ、何だかんだで私やばいんじゃ…」

態勢を崩したまま綿から転がり落ちた

技を出したのは地面すれすれだったようで、落ちてもそこまで痛くはなさそうであったが、ぶつかると思うと思わずぎゅっと目を瞑る

だがいつまでたってもぶつからない

おかしいなと思って目を明ける

「大丈夫でございますか?」

目の前には先程自分が眠らせてきた彼の顔があるではないか

しかも近い、物凄く近い

彼の息がかかるのだ

「あ……は……え、……」

「お怪我はないようですね、よかった…」

頭を優しく撫でられた

何だか顔が熱くなる

少し前にクダリに頭を撫でられたのに

少し前にNに抱き締められたのに

さっきはそんなこと感じなかったのに

「あ、あ……なんで…」

ちょっとドキドキした

「わたくし、プラナス様が心配で飛んでまいりました…
プラナス様、わたくしは素のままのプラナス様が好きなのです、そのままでよいのです
それに、…先程は申し訳ありませんでした、こんなわたくしを許してくださいますか?」

と、ノボリはプラナスをぎゅっと抱き締めた

「…なんか最後だけ……ずるいです、よ…」

ちょっと言い返すこともできなくって、プラナスはそうボリの胸に顔を埋めた

ノボリがこの時、プラナスの体温の高さにちょっとテンションが上がったのは、とりあえず内緒である




から始まる▲▽生活_04
(あれ、そういえば誰か忘れてるような…?)
(…………あんな人は放っておけばよいのです)
(せっかくだから三人で遊ぼうよ!)





プラナスは レベルが5に UPした! ▼
「愛力」が5あがった! ▼
「魅力」が2あがった! ▼
「運気」が4下がった! ▼
◎現在のプラナスのステータス
・愛力13(+5)
・知力12
・魅力12(+2)
・運気−3(−4)
・やる気1
・逃げ足−3



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