「プラナス様…」

彼の息遣いが聞こえる

「あの、ちょっと待ってくだ…」

「待てません」

ドサリと布団に倒された

両手を押さえられて身動きが取れない

「待ってください…まだ早いです、私心の準備が…」

「わたくしが、我慢できません…プラナス様、わたくしに全て委ねてくださいまし…」

彼の顔が段々と近づいてくる

プラナスは逃げようと必死にもがいたが、やはり逃げられなくて

「ひっ…ちょ、ホントに待って待って待って待っ……アッーーーーー!?」

迫ってくる彼に対して、彼女はふるふると顔を振った

…ところでぱちりと目が覚めた

「なんて夢見るの…」

がばりと飛び起きれば、窓から日が差し込んでいた

じんわりと汗ばんだ肌が少し気持ち悪い

「シャワーでも浴びさせてもらおう」

プラナスはそっと起き上がりシャワーへと向かった

昨晩一緒に寝たノボリとクダリは既に部屋にはおらず、代わりにテーブルに書き置きと共に朝食があがっていた

目玉焼きにサラダとシンプルであるがとても美味しそうだ

一緒にトーストの横にジャムが置いてある

「…料理、ばっちりなんだ…っていうか私より上手?」

プラナスはジャムを軽くトーストに伸ばしてかじった

さくさくという食間がまたたまらない

本来なら朝食などは自分が作るべきなのかもしれない

けれど、そんなことお構いなしに彼らは自分の面倒を見てくれる

何だか悪いなと思いつつも、ついつい頼ってしまう自分がいる

「む〜……複雑」

プラナスはトーストを一気に口に突っ込み、ごくりと飲み込んだ

そして傍らに置いてあるメモへと手を伸ばす

するとそこには

【プラナス様、先日発注しました制服が届いたそうですので、顔出しがてらギアステーションへおいでくださいまし】

とまあそんなニュアンスのことが書いてある

プラナスはそういえばノボリ達の職場で働かせてくれと言ったことを思い出す

その制服のことだろうか、向こうにあるらしい

受け取りに着たついでに挨拶して回れというのだろう

「でもシャワー、まずはシャワーね」

プラナスは残りの朝食も口へ含むと、テーブルからがたりと立ち上がった

先日ノボリ達と買いに行った服に美を包み出かけることにする

いつ見ても自分の着ているものは小さいと思う

同じ年代の子と比べても、プラナスはなんとなく顔や見た目が幼めで身長もあまり高くなかった

たまに四つも五つも若く見られるし

実はそれがちょっとコンプレックスだったり

のんびり歩いてノボリ達がいるギアステーションへと足を運ぶ

駅員らしき人を見つけたので、早速用件を述べたのだが、彼らは

「ボスに会うためにはバトルを勝ち抜いてください」

と、こう言うのである

「だから私はノボリさんとクダリさんにですね」

「ですからお二人に会うには電車に乗って戦っていただきませんと」

誰に何を聞いてもこの台詞一点張りである

「ボス……ボス?え?二人がボス?」

しかもプラナスがボスという単語に首を傾げると、「何言ってるんだこの人」的な顔で見られた、ちょっと悲しい

彼らは家ではそんな素振りは全く見せなかったが、どうも聞いた話をまとめるとこの施設の一番偉い人らしい

「そういえば、最初に会ったときにサブウェイマスターって…」

「サブウェイマスターがどうしたの?」

「んっ?」

ちょっと数日前のことを思い出していると、後ろから声をかけられた

相手は自分が言っていた「サブウェイマスター」という単語に反応したらしい

振り向けばプラナスと同い年くらいの男女が立っている

両方とも帽子を被り、動きやすそうな格好だ

目元や髪の色は同じである、兄弟だろうか

「サブウェイマスターを知っているの?」

「え、えっと…」

「会いたいならバトルを勝ち抜かないとだダメだよ」

そんな二人は停車している電車を指差しながらそう言った

どうも駅員が言っていたことは本当のようである

しかし、こんなことなら駅員に一声くらいかけておいてくれればいいのに…なんて少し思ったがまあ言わないでおく

「ホントに勝ち抜かなきゃなんですね…」

「そういう施設だからね、ここは」

「とりあえず彼らに会いたいの?」

「はあ、まあ…そうなるかな…」

プラナスはちょっと目が泳ぐ

わざわざ話し掛けてくれた二人に、サブウェイマスターとやらの片割れが旦那です、なんて口が裂けても言えない気がする

「二人に会うにはマルチに乗らなくちゃいけないよ、二人で行かなきゃなんだ」

「二人…ダブルバトルですか?」

「そうだね、君は誰か相手は………今探してるのか」

男の子はキョロキョロと辺りを見回した

しかし辺りには相手を探している人はいないようで、一人で電車へ入ったり、仲がよさそうに二人で入っていったりしている

男の子はちょっと困ったように顎に手を当てたが、すぐに何か思いついたようだ

「そうだ、せっかく会ったのも何かの縁だし、よければぼくらと組むかい?」

そう言ってにこりと笑ったのである

「ぼくはトウヤ、こっちはトウコ」

「わたし達双子なの」

手を差し出してくる二人

プラナスはその手をぎゅっと握っておいた

「じゃあ、早速ぼくと組んでマルチに乗ろうよ」

「えー?トウヤが組むの?わたしもバトルしたいよ」

「それはダメ」

「ダメって…」

トウヤはガシッとトウコの肩を掴んだ

彼なりに考えがあるようで、それを淡々と述べる

「だってあいつら毎回トウコのこと変な目で見るんだ…ぼくの大好きなトウコ…誰にも触らせたくないのにあいつらときたら毎回毎回…」

「そ、そんなことないって…」

「いや、絶対にあの目は本気だ…ぼくはトウコに指一本触れさせはしない…!
ホントは頻繁にここに来たりするのもちょっと嫌なんだけど、でも強くなるためには…
あいつらがトウコに何かしたらぼくがあいつらを倒してぼくも…」

しかしどうも意図していることが違うようだ

トウヤは現在完璧にダークサイドである

トウコは慌ててトウヤの手を自分の肩から外す

「と、トウヤ落ち着いて!わたしどこにも行かないから!」

「ほ…ほんと?」

「うんうん」

「ほんとにほんと?」

「うんうんうん」

トウコがぶんぶんと首を縦に振ると、トウヤの周りにあったブラックオーラがゆっくりと引いていく

目も何だか生気がなくなりかけていたが、どんどん光が戻ってくる

「なら大丈夫だね!じゃあぼくとプラナスがちゃちゃっと行ってくるからトウコは待っててよ」

「わ…わかった…」

そして完全復活したトウヤに今度は両手を握られ、トウコはたじたじである

「いつもこうなの?」

「そうなの、なんか…スイッチ入ると止まらなくて…」

プラナスはこっそりとトウコへ目を配らせてみる

彼女はいつものことだから、と苦笑した

「それじゃあ行こうか
トウコ、誰かに話し掛けられてもむやみに喋ったりとかついていったりとか」

「はいはい、しないから行ってきて」

「うん」

半ばトウコが二人を押し込む形になったが、とりあえず乗車した

ぱっと見た感じは普通に電車である

ここでバトルをするというのだから驚きだ

「よし、ぼくについてきてね」

トウヤはどうやら常連のようだ

慣れたようにバトルをこなし、知り合いであろうトレーナーと会話している

プラナスはそれを見ているだけも悪いので、できる範囲でサポートすることに専念した

そしていつの間にか時間を忘れ、気が付けば電車の最後尾である

プシュ、という音と共に車両を繋ぐドアが開いた

そこを潜れば家でいつも見ている二人の姿が見える

ドアの開く音に気が付いたのか、黒い車掌服を着たノボリがくるりと振り返って

「またお会いしたしましたね、スーパー………プラナス様っ?」

そして驚いたように目を見開いた

「あ、トウヤだ!トウコはー?」

「聞こえない聞こえない聞こえない聞こえない」

「うわー…」

一方クダリは嬉しそうにトウヤに話し掛けているが、トウヤは耳を塞ぎ首を振っている

ノボリはそれを横目で見ながら、不思議そうに首を傾げて

「プラナス様、なぜここへ…」

「駅員さんが取り合ってくれなくて
ノボリさん、私がここにくること伝えておいてくださいよ…」

「きちんと伝わっているはずでございます
クダリが確かに伝達すると…」

「あ」

「…………」

「…………え、えへっ?」

一瞬静かになった車内で、気まずそうにクダリは舌をぺろりと出した

「…クダリ」

「…つ、つい…ね?」

「ね?ではございませんよ」

「ぶー!ノボリのロリコン!」

「ろっ……だから違いますと何回も言ったでしょう!」

クダリの一言に、ノボリは酷く動揺する

クダリはそれで勢いづいたようだ、プラナスの方を向いて

「プラナス聞いてよ!ノボリったらロリコンなんだよ!」

なんてノボリからしてみれば余計なことをぺらぺらと喋る

プラナスはそれに衝撃を受けたような顔をする

そしてちらりと視線を自分の身体に落とし、そのあまり発達していないところをじっと見つめて…

「気にしてるのに…!」

と、目にうっすら涙を浮かべてそう言った

ノボリはさっとプラナスの元へと駆け寄るが、プラナスはそれに合わせて後退する

「のっ…ノボリさんがロリコンだなんて…私…そんな!?」

「ご、誤解でございます!」

「いやああああああ!?」

「逃げないでくださいまし!」

ばたばたと走り回るプラナスを追い掛け、ノボリも車両を駆け回った

クダリはその光景を楽しそうに見ながら、トウヤへ向き直り

「トウコ置いてきたの?」

こっちはこっちで話を進めることにする

トウヤはそれに怪訝そうな顔をしたが、頷いてみせた

「今頃外で誰かに絡まれてるんじゃない?」

「大丈夫、ぼくは念を押してきたから」

「そう?むしろ放っておいた方が危ないよ」

「そ、そんな…まさか?」

「うん、今時の女の子って凄…」

「〜〜〜〜っ!トウコ!?」

クダリが最後まで言い終わらないうちに、トウヤは自分の大好きな双子の名前を叫びながらUターンして走り去っていく

よほど心配なようだ

クダリはひらひらと手を振っておいた

「それで、二人共落ち着いた?」

そして後ろでわーきゃー騒いでいたプラナスとノボリの方を振り向く

「何だかんだで仲いいよね、見知らぬ相手と結婚したとは思えない」

そこにはノボリに抱きすくめられて尚暴れるプラナスと、それを必死に宥めるノボリの姿

クダリはそれを見てにっと笑った

まだまだ電車は止まらない




から始まる▲▽生活_03
(っていうか何で抱き合ってるの?)
(私、ちっちゃくないよ…!?)
(……わたくしはロリコンでは、ございません…)





プラナスは レベルが4に UPした! ▼
「愛力」が3あがった! ▼
「知力」が2あがった! ▼
「やる気」が1下がった! ▼
「魅力」が2あがった! ▼
◎現在のプラナスのステータス
・愛力10(+3)
・知力10(+2)
・魅力10(+2)
・運気−3
・やる気3(−2)
・逃げ足−3



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