翌日、仕事を抜け出したノボリとクダリは街の中をうろうろしていた

「僕、仕事休めて嬉しい」

「……何か言いましたか?」

「な、何でもない!」

クダリはるんるんしながら辺りをきょろきょろしている

「街久しぶりだね」

「そうでございますね、いつもは地下ですから」

カツカツと靴の音が響く

仕事を一瞬抜け出してきた形なのであまり時間もない

それに彼らが着ている服はとても派手でよく目立つのだ

プラナスには玄関で待機しているように言ってきたので今頃はバタバタと準備をしているかもしれない

そう思いつつ、ノボリは自分達の家のドアノブに手を掛けた

「プラナス様、お迎えにあがりました」

そしてそのままドアを開けると、ちょこんと床の上に腰掛けている彼女の姿が目に入った

「えーと…おかえりなさいまし?」

「はい、ただいま帰りました
といっても、すぐ戻らなければいけませんが…まいりましょうか?」

「はい」

ノボリに手を引かれて家を出た

何だかちょっと恥ずかしい

「ノボリいいな!僕も繋ぐ!」

そして何を思ったのか、クダリまでプラナスの空いている片方の手をしっかりと握った

「な、なんか連行されてるみたいで怖いんですけど…」

「大丈夫大丈夫!」

「気にしないでくださいまし」

二人にぐいぐい引っぱられ、小走りになる

身長のせいか歩幅がまるで違うのだ

「まずはプラナス様の服を見に行きましょう」

「次は日用品ね!」

話している間にいくつか店を通り過ぎたが、彼らの愛用の店ではないようだ

しかし、プラナスが今まで見たこともない施設やショップが並んでいる

珍しそうに見入っていると、いつの間にか目的地へとついたようだ

目の前にはところ狭しと洋服が並んでいる

「わたくし達は仕事ばかりであまり私服は着ませんが…ここならばプラナス様の気に入る服も見つかるのではないかと思いまして」

「僕白が好き、ノボリは黒ばっかり!」

クダリは適当にカチャカチャと服をかきわけて、白と黒の色合いの服を取り分ける

「僕、プラナスには白と黒の服着てほしい、僕達とお揃い」

そしてシンプルなワンピースをプラナスに突き出した

「わたくしも…そうですね、クダリに賛成でございます」

「だよね!プラナスは可愛いから何でも似合うよ!」

「クダリ…わたくしの台詞をとらないでくださいまし?」

「えへへ」

二人はプラナスそっちのけで彼女に似合いそうな服を次々と取り分ける

本当に彼らが言うように白と黒ばかり

プラナスはそれを見ながら、こんなに選んで大丈夫なのかと不安になる

だってお金を払うのは彼らなのだ

成り行きで結婚したとはいえ、頼りきるのも性にあわない気がする

しかしお金がないのも事実で、いつかなんとかしてまとめて返そうとプラナスは思った

まあそんなことを口に出したら彼らに怒られるかもしれないが

「試着してみてよ!」

ぼーっと二人の姿を見ていると、不意にクダリに呼ばれはっとなる

見れば、彼らの腕にはいっぱい洋服が抱えられている

しかし短時間でよくもこんなに捜し出したものだ

「試着して一番似合うものを購入いたしましょう」

ぽんとノボリに背中を押され、近くにあった試着室へと入った

そして一緒に大量の服が傾れ込んでくる

「ホントにこれ全部着るんですか?」

「勿論でございます」

山と積まれたものを指差しながらそう言うと、にこやかに返された

そんな輝いている笑顔を見せられては断るにも断れない

プラナスはしぶしぶカーテンを閉めた

しばらく服を着替えるのが嫌になりそうなレベルである

とりあえず手前にあったものから着てみることにした

手に取ったのはかなり際どい感じの短いスカート

それにカーディガンやニーソックス等をあわ…あれ、これ楽しいかも?

なんて思いながら着替えていると、何だか隣が煩い

こんこん、こんこんと壁を叩いているのだ

一体誰が何をやっているのだろうと気になったが、特に気にすることもなく試着のために服を脱いでいく

しかし、このこんこんという音…どうも聞いていると自分に向けてのものらしい

ひたすら自分側の壁しか叩かれないのである

煩いししつこいので、いよいよ我慢できなくなってノックを返す

すると向こうは一瞬静かになる

飽きたのかもしれないと思ったのだが、どうも違うようだ

次の瞬間話し掛けられたのである

「誰かいたんだね、よかった」

しかも男性の声だ、そこそこ爽やか

「ねえ、そっちにキューブが落ちていないかい?ボクがさっきそこを使ったときに忘れたようなんだ」

「キューブ…?」

「大事なものなんだ、だけど着替えるのに夢中でね」

男はとても早口で、ちょっと集中しないと何を言っているのか聞き取れない

「でも何でそっちで着替えているのにここにキューブが?」

「だからそっちを使っているときに忘れたのさ」

「え、こっち使い続けたらよかったんじゃ…何で移動…?」

「中々欲しいものが決まらなかったんだ
だから同じ服でも場所を変えたら気分も変わるんじゃないかと思って」

その返答を聞いてプラナスはちょっと変わった人だな、と思いながらも試着室をくるりと見渡す

すると、確かに隣の男が言うようにキューブのようなアクセサリーがハンガーかけにかかっていた

手にとってみると、それはパズルになっていてくるくると動いた

「ありましたよ」

プラナスが壁越しにそう言うと隣からはふう、と安心したような声が聞こえる

そしてその直後、プラナスが入っていた試着室のカーテンが勢いよく開いた

「ありがとう、そしてありがとう!」

聞こえたのは、先ほどの男性の声だった

すぐに隣から飛び出してきたのだろう、服がちょっと乱れている

薄い緑色の髪を背中まで垂らして、七部袖のシャツにベージュのズボンとラフな格好

帽子を被っていて顔はよく見えなかったが、何だか眼に光がなかった

彼はプラナスの手からキューブを受け取り、腰に下げ

「助かったよ、ありがとう!」

そう言ってにこやかに笑った

しかし、プラナスは思い切り脱いでいる真っ最中である

いきなりのことには昨日のも含め、すぐには対処できない

大事なところは隠れているものの、色々丸見えである

現に男の後ろの方で、顔が真っ赤なノボリが必死にクダリの目を押さえているのが視界に入った

「ノボリいきなりどうしたの!?前が見えないよ!?」

「ク、クダリは見てはいけません!いえ、わたくしも見てはいけません!?」

ぎゅうと両目を閉じたノボリは、前が見えないためにふらふらしている

クダリもそれに巻き込まれ、かなり危なっかしい足取りだ

「………」

思わず目が点になる

まあ原因は目の前でニコニコ笑っている男であるとして…

「きゃああああああああ!?」

とりあえず悲鳴をあげてカーテンを閉めておいた

恥ずかしさのあまり体中が熱くなる

しかし当の本人は特にそれに反応することもせずに

「本当にありがとう、大切なものだから見つからなくて困ってたんだ
ボクはN、また会えるといいね!」

しれっとそう早口にまくしたてて、走っていってしまったのである

「うう、どうしてこうなった…」

結局、この一連の事件のせいで服選びや日用品を買いに行く気分ではなくなってしまった

しかし、もうすんだことだと諦めたらそうでもなくなったためにその後は三人で買い物を再開した

「散々でございましたね…」

「僕はノボリに目隠しされたせいで話についていけないんだけど」

「申し訳ありません、誰にも見てほしくなかったのです」

家に帰って買ったものを並べながら、ノボリは恥ずかしそうにそう言った

「ノボリは過保護だなあ」

「そうでもございませんよ」

「いいや過保護だね!」

クダリは楽しそうにノボリをつついた

「しかし、許せないのは、あのよくわからない方にプラナス様の肢体を見られてしまったことですね」

「私、どうしていいかわかりませんでした
それに私あまりプロポーションに自身ないし…」

「…美しかったので大丈夫かと思います、しかし許せません」

一方ノボリはそう言って、眉間にしわをよせる

しかし今の発言からもろもろばれたのは確かである

「………ノボリさん」

「何でございましょう?」

「見てないって言ったのに見たんですね…」

プラナスがゆっくりとそう言うと、ノボリはしまったと言うように肩をすくめた

そして

「夫婦ということで許してくださいまし?」

上目遣いにそんなことを言ったのである

プラナスはその姿に思わずきゅんときたが、すぐにそれを振り払う

「何言ってるんですか!ダメですよ!」

だがノボリは引かずに

「そう言わずまた見せてくださいまし!」

と、なんかもう開き直った

「………」

そんな彼を見て、プラナスの突っ込む気力がなくなったのは、言うまでもない




から始まる▲▽生活_02
(お風呂覗けばいいんじゃないの?)
(グッドアイデアでございます!)
(グッドじゃないよ!?絶対ダメですからね!)





プラナスは レベルが3に UPした! ▼
「愛力」が1あがった! ▼
「運気」が4下がった! ▼
「魅力」が2あがった! ▼
◎現在のプラナスのステータス
・愛力9(+1)
・知力10
・魅力8(+2)
・運気1(−4)
・やる気3
・逃げ足−3



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