「…分かりました。それで彼が救えるのなら」

「……すまない」

「いえ。謝らないで下さい綱手様」



まだ夜も明けぬ薄暗い部屋で、綱手様は私にSランク任務を与えつけた。アイツに気取られぬようにここまで来いと言われた時点で何となく察しがついたのだけど、いざ告げられると案外キツいなあ…。これからもずっとみんなで暮らしていくはずだったんだけど、一体いつから道から逸れたんだろう。

そう問われれば、それはきっと生まれた時に私の片割れに九尾が封印された時。小さな頃に私は、いざというときのために片割れの影武者として生きていかなければならないと、そう誰かに教わった。人柱力の片割れと、そうでない私。どちらが里に有益か考えれば、その教えも間違いではないと思えた。



「名前。双子ってだけでお前には損な役回りさせてばかりだったな」

「いいんです。全てナルトのためですから」

「たとえ死んでもナルトため、か?」

「はい」

「なぜそこまで…」



それでは失礼します。と頭を下げて部屋を出ようとして、綱手様の声が背中にかかる。



「名前、生きることを絶対に諦めるな」

「…分かってます」



私は振り返らなかった。振り返って綱手様の顔を見れば、嘘をついているとバレてしまうから。綱手様、もう貴女様に会うことはないでしょう。
長い長い廊下には私の足音だけが静かに響いていた。



───



一時間後には出発しなければならないから家に帰って任務の準備を始める。ナルトには気取られるなって言われたけど、その心配はいらない。だって今もぐっすりと眠っている。まだまだナルトが夢から覚めることはない。


長かった髪の毛をクナイで切り落とし、少し整えれば彼と瓜二つな私がそこにいた。やっぱり双子なんだなぁって自分で思ってしまった。顔は似てるけど性格は似てないねってしょっちゅう言われてたっけ。でも自来也様は二人ともお父さんとお母さんと同じ所が似てるって言っていた。素直に嬉しかった。家族はナルトだけだったから、更に家族を実感出来た気がして。

誰よりもナルトが大切で、双子の妹として兄を支えたくて、お互いに新しい家族が出来たら家族同士で集まって。いっぱいいっぱいしたいことがあったけど、それはもう叶わない。


ナルトには素敵な仲間がたくさん出来たから、私がいなくても笑っていけるよね。私は私にしか出来ないことであなたを救うから。

里の未来を、最愛の君を守るために、誰も傷付かないように、私はこの命を捧げるんです。



「ナルト、元気でね。絶対火影になるんだよ。私がいないからって怠けちゃ駄目だからね」



部屋もきちんと綺麗にして、ラーメンばっかじゃなくてちゃんとした食事も摂ること。サクラとカカシ先生に迷惑はかけないように。あとサスケを木の葉に連れ戻すこと。それから、それから…、一人にしちゃうけど許してね。


「名前ー!一楽行くってばよ!」


「兄貴の言うことは素直に訊けー!!」


「たとえ将来俺たちに家族が出来ても、名前は一生俺の唯一無二の兄妹で、家族だ!」




うずまき名前はうずまきナルトの妹に生まれることが出来てとてもとても幸せでした。


お兄ちゃん、ありがとう、


さようなら





そこにがありませんように

title / hmr
(110810)
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