「今夜は冷えるから温かくして寝るんだよ」



私の恋人はまるで母親のようなことを言って任務に向かった。今日は休みだと言っていた気がしたんだけど、きっと急な任務が入ったのだと思う。突然やって来たと思ったらあっという間に去っていった。少し声を張って行った「行ってらっしゃい」はきっと聞こえなかっただろう。



「さむ…」



彼の言った通り、昼間あんなに暖かかった気温は夕方から夜にかけてどんどん下がり、日付が変わる頃にはすっかり冷え込んでいた。

ソファに座っていつ帰るかわからない彼を待つ。毛布にくるまっているから寒くはない。だけどいつも隣にあるはずの温もりがないのはとても淋しい。上忍ともなれば任務は全て命がけのものばかりであることぐらい知っている。常に死と隣り合わせだということも。全て理解した上で私は彼と付き合っている。だけどやっぱり不安なんだ。

でも大丈夫。彼は強いもの。死んだりなんてしないわ。私を残して、死んだりなんて。




──



冷たい空気と少しの浮遊感で目が覚めた。いつの間にか寝てしまっていたということに気付く。今は何時なのだろうか。外は暗いから朝ではないことがわかる。寝起きの頭でぼーっと考えていると、図上から間延びした声が降ってきた。



「温かくして寝なさいって言ったでしょーが」

「…カカシ?おかえりなさい」

「ただいま」



浮遊感の原因はカカシに横抱きにされていたからだった。帰ってきたらソファで寝てしまっていた私をベッドに移すためだ。温かいと思っていても、体は夜の空気ですっかり冷えてしまっていた。カカシに触れている場所が温かい。

私をゆっくりとベッドに下ろして髪を撫でる。見えている片目と目が合うと弓なりに弧を描いた。



「一人にしてごめんね。名前と一緒にいたかったんだけど」

「いいよ、謝らないで。急な任務だもの。仕方ないわ」

「代わりに明日休みをもらったから、一日中名前といられるよ」

「ほんと?嬉しい」



額当てを外し口布を下げたカカシがもぞもぞと布団に入ってくる。私の額に軽く口付けあと力強い腕に抱かれた私をまた眠気が襲う。無事に帰ってきてくれた喜びと安心を胸に、彼の腕の中で今日もまた眠りにつく。



「おやすみ、名前」



カカシの声を最後に眠りに堕ちていった。

夜はまだ明けない。





夜が明ける前に会いにきて
110730
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