吐いた息が真っ白だった。それだけ空気が冷えているということだ。ニット帽を被って耳当てをして手袋をはめて中に三枚と更にヒートテックを二枚着てタイツも二枚履いてレッグウォーマーも履いておっきいホッカイロも持った。完全防寒。の筈が寒くて身体がガタガタと震える。なんで。やっぱマフラーを忘れたのがまずかったのかも。だって首筋が凄い寒い。いつもマフラーだけは忘れないのに今日に限って忘れるなんて。あまりの寒さに顎がガチガチと鳴った。
三日の夜だというのにまだまだ参拝客の列は長く自分たちの番は当分来そうにない。何か温かいものでも食べられればいいのだけど、この列を外れる訳にはいかなかった。

「さっきからどうしたんだってばよ」
『寒い』
「そうか?」
『こんなに冷えてるのに寒くないのアンタ』
「あんまり」
『…あそうですか』

私より薄着なのに寒くないとかどんな身体の造りしてるんだか。でも耳も鼻も真っ赤だから寒いことに変わりはないんだろう。だけど首にはマフラーがぐるぐると巻かれていて凄い暖かそう。羨ましい。じーっと見つめていると視線に気付いたナルトがこっちを向く。

「何か温かいモン食うか?」
『列から抜けられないから今はいい』
「買ってくる」
『いい。…一人で行くのも待つのもやだ』
「…」
『……』
「………」

ぐるぐるぐる。首筋に温もり。ソレからは少しナルトの匂い。

『ナルトが寒いよ』
「おれも巻いてるから平気だってばよ」
『…あったかい。ありがとう』
「へへっ」

ナルトの長いマフラーの半分が私の首に巻かれていた。ふわふわした肌触りが気持ち良い。いつもより近い彼との距離。寒さはあまり変わらなかったけど心はずっと暖かかった。





深呼吸ひとつ、あなたの二酸化炭素と混ざる
12'0107
title / 誰そ彼
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